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はやぶさ2プロジェクトマネージャが語る惑星探査における日本のミッション

JAXAはやぶさ2プロジェクトマネージャ・津田雄一氏インタビュー

リュウグウ試料分析 太陽系の謎 解明に期待

小惑星探査機「はやぶさ2」が地球に帰還して半年が経過し、月内に小惑星「リュウグウ」で採取した試料の本格的な分析が始まる。試料のキュレーション(まとめ)作業では、分光分析などから水と有機物の痕跡を発見した。分析が進めば太陽系や生命誕生の謎に迫れる。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の津田雄一はやぶさ2プロジェクトマネージャに、試料分析や今後の宇宙探査に対する期待を聞いた。

―月内にリュウグウで回収した試料の分析が始まります。

「とても楽しみにしている。元々掲げていた水と有機物由来の物質の発見だけでなく、思ってもみないようなことが起こってほしい。試料があるということは宝だ。悪戦苦闘しつつ採取してきた試料から、太陽系の謎が見えてほしい」

―飛行を続けているはやぶさ2の現状は。

「順調に次の惑星に向けて飛行しており、現在は地球から1億キロメートル以上離れている。ただ、リュウグウへのタッチダウン(着陸)の瞬間を撮影したカメラと、エンジンに搭載されたヒーターが故障した。劣化が見られるのは想定内。次はどこが故障しそうか対処方法などを検討している」

―世界の惑星探査をどう見ていますか。

「米国は国際宇宙探査計画『アルテミス計画』を主導し、中国は多くの探査機を打ち上げている。日本は真っ向勝負できるリソース(資源)がないのが残念だ。うまく戦うべき場所を見つけ、深く切り込むミッションをすべきだ。初代はやぶさから、はやぶさ2の打ち上げまでに約10年かかった。ミッション挑戦の頻度が上がらないと、同様の探査が今後できなくなるのではないかと心配している」

―日本向きのミッションとは。

「はやぶさ2のミッションは世界からの評価が高く、日本に潜在能力があることを示せた。日本は他国に比べ低コスト開発や運用ができるはずだ。世界が狙っていない小惑星などに注目し、探査の頻度を増加し加速すれば、日本の立場を確保できるだろう」

*取材はオンラインで実施。写真はJAXA提供

【記者の目/輸送技術、低コストカギ】
米中など多くの国が惑星探査に乗り出している。高頻度で探査機を打ち上げるには、低コストで打ち上げ可能な輸送技術がカギになる。2021年度内にも打ち上げる大型基幹ロケット「H3」の後継機は、再使用型でH3の半分程度の費用で打ち上げが可能になる見込み。ミッションを増やし、日本のあるべき姿の確立が重要だ。(飯田真美子)

日刊工業新聞2021年6月16日

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