奇跡と呼ばれた初代「はやぶさ」に比べ、2号機が驚くほど順調だった理由

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大気圏突入後に火球として観測されたカプセル(JAXA提供)

夜空を貫いたひと筋の火球に、日本の科学技術の輝きを見た思いがする。

日本の小惑星探査機「はやぶさ2」の再突入カプセルが6日未明、地球に帰還した。関係者の努力に敬意を表したい。カプセルは落下目標だった豪州南部の砂漠で回収され、軌道制御技術の正確さを示した。日本に持ち帰った後、小惑星リュウグウで採取したとみられる試料の有無を確認する。

相次ぐ不具合に苦しみ、地球帰還そのものが「奇跡」と呼ばれた初代「はやぶさ」に比べ、2代目の活躍は順調だった。目的地・リュウグウの地表が予想外に岩だらけだったにもかかわらず、2度のタッチダウンを成功させた。小型表面探査車の投下や人工クレーターをつくる衝突実験など、予定された他の任務も着実にこなした。

それは失敗の教訓を次に生かし、成功を導くという日本のカイゼン活動を思わせる。「はやぶさ2」も、不具合や事故に備えた機構を搭載していたと聞く。だが「こんなこともあろうかと…」という非常措置は発動されなかった。

カプセルを放出する「はやぶさ2」(イメージ=池下章裕氏提供)

宇宙開発は一国の科学技術力を象徴する。「はやぶさ2」が内外から注目されるのは、微小重力の小惑星からの無人サンプルリターンにおいて世界をリードしたからだ。探査が順調に進んだこと自体が偉業といえる。

責任者である宇宙航空研究開発機構(JAXA)の津田雄一プロジェクトマネージャは「1号機を超える探査機を作ろうと思ってやってきた。(2号機の)成功を未来につなげたい」と話す。「はやぶさ2」はカプセル分離後、新たな深宇宙探査に向けて再出発した。

これまでの成功の陰にはJAXAだけでなく、多くの技術と製品を提供したメーカーの存在があったことを特筆したい。JAXAの宇宙科学研究所の国中均所長は「(最先端の技術を実現する)モノをつくるのがJAXAの本来事業」という。目に見える形で目標を達成し、多くの感動をもたらした「はやぶさ2」は、あすの日本の科学技術の道しるべになるはずだ。

日刊工業新聞2020年12月7日

COMMENT

小川淳
編集局科学技術部
部長

トラブル続きで満身創痍で地球にかろうじて辿り着き、カプセル投下と引き換えに自身も燃え尽きた初代「はやぶさ」と違い、トラブルらしいトラブルもなくすべてのミッションを完遂した「はやぶさ2」。初代の人類が初めて経験する深宇宙でのサンプルリターンという経験値を最大限生かし、はやぶさ2へと結実しました。 初代は何か絶体絶命のトラブルがあるたび、もしものために用意していた予備の回路などが役立ち危機を脱出しており、『宇宙戦艦ヤマト』で有名な真田さんの「こんなこともあろうかと」という台詞がオーバーラップするとネットミームに当時なっていました。はやぶさ2で「こんなこと」が起きなかったのは、この経験値を解析して落とし込むことに成功したことにほかなりません。 今のところ、探査機による深宇宙探査とサンプルリターンは日本が世界に一歩先んじています。2020年は「クルードラゴン」の打ち上げや月の「ゲートウェイ構想」の進展など、何かと宇宙づいていましたが、はやぶさ2の経験も人類の宇宙開発に必ず貢献するでしょう。 はやぶさ2は、extraミッションに向け、新たな小惑星へ出発しました。今度は地球に戻ることない片道切符です。本来なら初代はやぶさにもextraミッションが用意されていたはずです。初代の分まで、宇宙で羽ばたいて欲しいですよね。

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