「QRコード」で用途開拓、デンソーウェーブ新社長の展望
人手不足にコロナ禍が重なり、社会全体でデジタル変革(DX)への関心が高まっている。デンソーウェーブ(愛知県阿久比町)は、親会社のデンソーから2次元コード「QRコード」の事業を継承し、ロボットや制御装置、無線識別(RFID)、情報端末などの事業も展開する。DXで同社はどんな存在感を示すのか。4月に就任した相良隆義社長に話を聞いた。
―業況は。「ロボットと制御事業は2020年度(21年3月期)上期はコロナ禍で苦戦したが、下期以降は自動車業界の設備投資などで回復傾向。QRコードや情報端末の関連事業は店舗向け電子決済端末で苦戦しているが、非接触の機運が高まりチャンスでもある。21年度下期の回復を期待する」
―QRコードや情報端末での戦略は。「従来はモノを提供してきたが、今後はコトすなわちソリューションサービスを提案する。QRコードの普及は我々の強み。ニーズに合わせてカスタマイズし用途を開拓する」
「当社製品は工場での採用実績が豊富で品質と生産性の向上には優位性があり、丈夫で読み取り精度も高い。合理化ニーズが高い物流、流通業界はさらに採用が増えるだろう」
―ロボット事業の用途開拓の方向性は。「当社で最大の可搬質量60キログラムタイプを発売した。(自動車部品などの)工場全体の需要に対応するためで、これ以上の大型を開発する予定はない。一方、同500グラムの小型協働ロボット『コボッタ』は工場内で用途が見つかり導入が進んでいる。教材としての引き合いも多い」
―ロボット市場の課題と対応策は。「自動化ニーズは高いが、ユーザーにとってロボットはいまだ扱いにくいもの。『速く正確に動く』という評価は守りながら、ユーザビリティーを高める。そうすれば中小ユーザーも開拓できる。人工知能(AI)によるティーチングソフトウエアの提供など対応を始めている」
―新事業分野は。「IoT(モノのインターネット)のデータサーバーを商品化した。デンソーはファクトリーIoTを推進する方針だ。当社はデンソーグループの新規事業の一部を担う会社。IoTを4本目の事業の柱にしたい」
記者の目/“現地現物主義”のDX実践
QRコードは工場の「電子カンバン」のために開発した。基本特許の無償化により世界に浸透した現在も、デンソーウェーブは情報保護などの独自の新機能を追加して、ユーザーの困りごとに寄り添う戦略をとる。他の製品も同様、現場の課題解決を主眼に“現地現物主義”のDXを実践する。(名古屋編集委員・村国哲也)