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インクジェット印刷技術を活用したアート作品を販売するリコーの狙い

インクジェット印刷技術を活用したアート作品を販売するリコーの狙い

東京・銀座に5日開設する「リコーアートギャラリー」

リコーは、インクジェット印刷技術を活用して制作したアート作品の販売を始める。同社発のアートプロジェクト「ステアリープ」とアーティストとの共創で、アート作品を制作。7月中旬に立ち上げる電子商取引(EC)サイトや、5日に東京・銀座で開設する同社のギャラリーで販売する。新規事業の創出が狙い。現在、事業化に向けた準備を進めており、2年後に単年度の黒字化を目指す。

リコーは、2021年度に自社ギャラリーで9回の展覧会を計画。アーティストとの共創で制作した作品を、展覧会の場やECサイトで販売する。他のギャラリーと提携して開く展覧会でも販売する。

アート作品は、1点ものなど数量を絞った制作が中心。当面は、ハイエンド向けにBツーC(対消費者)で販売する。ただ、将来的には、企業や病院にサブスクリプション(定額制)モデルで作品をレンタル・販売するなど、BツーB(企業間)でも展開したい考え。事務機器の販売などで培ってきた販路を活用する。

ステアリープでは、リコー独自のインクジェット技術とデジタル技術を活用。紫外線(UV)インクで積層して立体形状を表現する「2・5次元印刷」技術を基盤に、凹凸や質感などを精密かつ自由に表現する。アーティストが生み出したデジタル画像や写真、彫刻などを、全く新しいアートとして創り上げることができる。

リコーのギャラリーでは5日から7月3日まで、梅沢和木氏の個展を開催する。同氏は、インターネット上にあるさまざまなデジタル画像を引用してコラージュし、さらにそこに加筆を行うことで作品を生み出してきた。ステアリープとの共創では、何百ものレイヤー(層)に重ねたデジタル画像を3次元(3D)データ化。1作品当たり23マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の薄さの印刷を約150回繰り返して制作した。

リコーは、新規事業の創出に向け、社内外の起業家の成長を支援して事業共創を目指すアクセラレータープログラムを実施している。ステアリープは、同プログラムに参加する社内チームが生み出した。

日刊工業新聞2021年6月4日

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