「オフィスサービスの割合を増やす」リコー社長が仕掛ける、OAメーカーからの脱皮
現場の地域戦略重視
リコーはコロナ禍で主力の複合機事業に逆風が吹く中、事業構造の転換を急ぐ。4月にカンパニー制を導入。複合機事業とオフィスサービス事業を一つのカンパニーに統合し、同事業の伸長を図る。山下良則社長に今後の見通しや戦略について聞いた。
―コロナ禍によるオフィス出社率の低下で、オフィス印刷量が減少しました。ペーパーレス化は感染収束後も続くのでしょうか。
「地域ごとに異なるが、印刷量は(総じて)100%には戻らない。特に日本は、これまでデジタル化が遅れていた分、減少幅が大きくなるかもしれない。ただ、紙の良いところもある。心配だから保管しておきたいというものは一気になくなるが、仕事に必要で紙だからこそ価値があるものは残るだろう」
―今後の成長をけん引するオフィスサービス事業の戦略は。
「現場の地域戦略が大事になってくる。ただ、あまりにも現場のカスタマイズをすると収益が上がらなくなる。このため、世界共通で(定額制ビジネスを提供するための基盤)『リコー・スマート・インテグレーション』を活用し、同基盤の上に国・地域別のソフトウエアを上乗せしている。自分たちで作ったソフトウエアを少しずつ標準化していけば、粗利率は上げていける」
―2022年度までの新中期経営計画を策定中です。
「2月の終わりか3月の初めに発表する。最低でも19年度までの実績には戻し、22年度はさらに上を目指したい。オフィス印刷は厳し目にみる一方で、オフィスサービスの割合は上げていく」
―事業活動で使う全ての電気を再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際組織「RE100」に加盟しています。脱炭素社会の実現に向けた課題は。
「(参加表明した当初)『達成できるのか』という声も頂いたが、『やらねばならない』という意識だった。ただ(電力の)供給側が変わっていかないと(我々)需要側は苦しいところがある。電力消費量の多い沼津と福井の工場で使用する電力を再エネで賄おうとすると、高いということもあるが、まず安定しない。当社の再エネ使用率は、欧州では9カ国で100%を達成しているが、日本はまだ2%未満。政府が目標を明確にしたことで、需要・供給側は連携しやすくなるだろう」
【記者の目/デジタル転換、次の一手に注目】
山下社長は20年春に「OAメーカーから脱皮し、デジタルサービスの会社へ転換する」と宣言した。カンパニー制の導入は、デジタルサービス会社への転換に向けた一つの布石となる。新体制下で経営資源の再分配を進めつつ、成長事業のオフィスサービスの収益をいかに伸ばしていけるか。山下社長の次の一手に注目したい。(張谷京子)