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画期的な耐火被覆製品を扱う企業、倒産に至った信用失墜の決め手

万象ホールディングス、製造業参入が裏目に

耐火建材の製造、販売、施工を手がけていた万象ホールディングスなどグループ4社は、2月9日に民事再生法の適用を申請した。万象ホールディングスは断熱材販売、施工を手がける企業グループの管理・指導を目的に2013年に設立された。

主力に扱っていたのは大手断熱材メーカーが製造する巻き付けタイプの耐火被覆製品。建築物の耐火性能向上のため、鉄骨などに巻き付けピン留めして施工するタイプのもので、一般的な吹き付け工事よりもコストは高いものの、施工に熟練の技術が必要なく、建造物が汚れない、工期短縮につながるなどのメリットがある画期的な製品だった。同製品の需要増でグループの業容は拡大していったが、同様の耐火被覆製品を、生産から販売まで自社一貫体制で構築するのが代表・吉川孝則氏の悲願だった。

17年11月、念願の福島県富岡工場が竣工する。ところが、機械設備の不具合などにより操業が予定より遅延し多額の損失を被った。ようやく生産を開始するも従業員の定着率が低く生産性はなかなか向上しなかった。19年8月期は年商21億3100万円を計上したが、収益性に乏しく多額の借入金も重荷となるなど厳しい経営を余儀なくされていた。

20年秋、ついに同社は関係会社とともに埼玉県中小企業再生支援協議会の支援下で再生計画策定支援を受け、私的整理による事業再生を模索することとなった。しかしグループ全体でキャッシュアウトが生じ、同社に関して支払い遅延などのネガティブ情報が一気に増加、信用不安が増幅した。

さらに、過去資金繰りに窮して代表が金融機関以外から2億円を調達していたことが判明。取引行の信用は失墜し、追加支援を要請するも実行されず、21年2月10日支払いのめどが立たなくなったため、私的整理は困難となり、グループ4社とも民事再生法による再建を目指すこととなった。

(文=帝国データバンク情報部)
日刊工業新聞2021年6月3日

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