子ども服で熱狂的なファンを獲得したアパレル、倒産へ転げ落ちた「素人」経営者の悲劇
グランドスラムは1996年に創業した企業から分離独立する形で2006年6月に設立。「Grand Ground」を中心に複数のブランドを展開し、カラフルでオリジナリティーあふれる子ども服で熱狂的なファンを獲得していた。
13年には63店舗を展開するまでに成長し、さらに170店舗におよぶ取扱店や販売代行店への卸売りも手がけていた。09年以降、売上高は毎期10億円以上の伸びを見せ、ピークとなる13年6月期には年売上高約58億円を計上していた。
しかし一気に膨張した売り上げはしぼみ始めると早かった。無理な出店を進めたことで不採算店が増加。さらに複数の販売代行業者が撤退したことで、ピークからわずか1年後の14年6月期には年商約40億円まで落ち込み、2億円超の赤字を計上。そのような業績悪化の中でも同年8月には心斎橋に13億円超の自社ビルを購入する。
ただ、代表が交代すると経営を方向転換し、大阪・心斎橋の自社ビルを購入からわずか7カ月で売却。不採算店舗を整理して過剰在庫の軽減を図った。売上高こそピークの3割以下に落ちたものの、経常段階で利益を出せる体制に戻しつつあった。
こうしたなか、再建途上だった17年12月に突如として金融コンサルタントを名乗る人物が同社の全株式を取得し、代表に就任。この新代表にはアパレル業界の経験はなく、取引銀行の担当者は「アパレルの素人が買収した経緯もわからず、具体的な経営方針も示されぬまま不安しかなかった」と語っていた。
その半年後、不安は現実となる。取引先に支払い遅延を頻発した上、銀行への返済も延滞。関係者には要領の得ない説明に終始する。その後も支払いも返済もされないまま店舗は閉鎖され、従業員はほぼ全員が解雇。業を煮やした取引先から破産開始手続きを申し立てられ、20年10月26日に同手続き開始決定を受けたことで、14年の歴史に終止符を打った。
(帝国データバンク情報部)