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大手テーマパークから受注準備に入っていたガラス工事業者、倒産へ転げ落ちた「重い選択」

アートフロンティア、コロナで工事遅れ資金調達に限界

アートフロンティアは、2006年8月設立のガラス工事業者。ホテルや船舶などの大型施設の内装工事のほか、木工家具や工芸品の設置工事なども手がけていた。当初は、ガラス工芸品の製造会社の販売代理店業務を中心としてスタートした。特に装飾ガラスの扱いを専門とした英国の装飾ガラス大手から直接仕入れるルートを確立するなど、同業他社とは一線を画す形で、専門性の高い提案ができることを強みとしていた。

零細企業としてスタートした同社だったが、着実に実績を重ね、大手テーマパークの工事や空港施設の内装工事にも設計段階から参画するにまで至り、ピークとなる19年12月期には年売上高は約5億800万円に拡大していた。

しかし、新型コロナウイルス感染症が同社を襲った。新型コロナ拡大前、同社は大手ゼネコンからテーマパークに関する大型案件の受注に向けた準備に入っていた。設計にかかる分析や調査、工事体制の整備など20年春の正式受注を目指していたが、新型コロナの感染拡大で契約までに時間を要する事態となった。

その間、契約にかかるまでの費用は自社で負担する必要があり、同社は選択を迫られることになる。この時にはすでに借入金の負担が重くのしかかっていたが、正式受注が得られることで借入金は返済できると見込んで手数料の高いファクタリング業者から資金を調達する形でなんとかしのいでいた。その後も、先行き不透明な感染拡大の状況下で、工事の着工は遅れていた。

結果、資金調達も限界に達して事業継続を断念、関係会社のVDARAとともに破産手続き開始決定を受けた。倒産時には、過去に従業員が下請け業者に工事代金を水増し請求させ、着服するという事態も表面化していたと聞かれる。業容拡大途中に襲った新型コロナだが、経営上の課題を抱えていた可能性をにおわせる事例だったとも言えるだろう。

(文=帝国データバンク情報部)

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