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日本電産・永守氏の教育論「中学、高校から『起業したい』という夢を持てるように」

日本電産会長兼京都先端科学大学理事長・永守重信氏に聞く(下)
―6月に日本電産の最高経営責任者(CEO)を関潤社長に託します。京都先端科学大学の経営に関わる時間が増えるのでは。

「一挙には増えないが、会社の方も二頭政治みたいになってはいけない。私がやりたいのは、教壇に立って起業塾やビジネススクールで自らの経験を学生に伝えること。一教員、一創業者、一経営者として、自らの経験を学生に語りかける。そういうことが非常に大事な仕事だと考えている。会社は関(社長)が立派な成績を上げてくれればくれるほど、私はもっともっと教育に情熱を注げるようになる」

―起業家の輩出も使命です。若者に接してみていかがですか。

「機運は高まっている。中学、高校くらいから『起業したい』という夢や希望を持てるような教育をしないといけない。(別の大学に進学した)友人の孫も電話で起業したいと言っていた。(起業について)教えてほしいというので、なんで別の大学に行った学生を教えなきゃいけないのか、もう一度受け直せと、ちょっと器の小さい返事をしたが」

―大学発ベンチャーなど若者の起業は増えています。

「(京都市ベンチャー企業)目利き委員会(の委員長)をやっていたが、来るのは退職した年配ばかり。社会に出て10年、15年で起業してほしい。一方で学生時代から起業している人もいるが小粒。基礎ができていないから小さな建物しか建たない。ブームに乗ってしまうというのが一番良くない。私なんかの人生考えたら苦しみの連続。苦しさの後に良いモノが生まれるからものすごく喜ぶ。苦しんで苦しんで、またできたという繰り返し。そんなことばっかりやってきたから、コロナが来たら趣味も何もない。困っているわけだ。ただ、こうやってきたから大きな会社ができた。楽しみながら起業したり、ちょっと成功したらぜいたくするようではダメだ」

―京都先端科学大学に150億円近くの私財を投じてきました。これからの計画は。

「教育のレベルを上げていくこと。キャンパスの整備もやっているが、魂を入れていくのは先生方。大学を良くしていこうという熱意ある先生にもっと集まってもらいたい。成果が出るものに対してはきちんと資金援助する。しかし安易に使うなと言っている。天からお金が降ってくると思ってしまうと最後は失敗する」

―医学部新設構想もあります。

「社会のためにやろうとしているが、そう簡単ではない。トライしてみて、ややこしいようならやらない。正々堂々と正門から入って、手続き通りに物事が進むのであればやる。行政手続きに政治が入ってくるようであれば近づいてはいけない。自分の職業観や人生観を曲げてでも実現しようとは思わない」

京都先端科学大学理事長・永守重信氏

日刊工業新聞2021年5月28日

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