立ち上げ時間を半減。日立金属が開発した部品検査ロボットの実力
日立金属は人が教え込まなくても自律的に自動車部品などの外観検査を自動化するロボットシステムを開発した。人工知能(AI)を使った深層学習で製品形状などを事前に把握し、必要な情報の入力・設定といった検査立ち上げ時間を50%超短縮。2022年度以降、社内量産ラインに順次導入する。将来の外販を視野に入れる。検査精度向上のためNTNやエクサウィザーズ(東京都港区、石山洸社長)などと連携して開発を進める。
日立金属は磁石や電線、特殊鋼、鋳物製品など幅広い製品を持つ。傷や欠け、くぼみ、穴など不良箇所の検査は従来、人手による対象物のセット、目視、判定作業が必要。一部は自動化されても複雑な検査は熟練者に依存しがちだった。開発した外観検査システム「なんでもインスペクター」は、対象物の扱いをピッキング・ハンドリングユニットで、目視と特定を撮影・判定ユニットでそれぞれ自動化した。汎用性が高く、現場のニーズでユニットを分割・連結できる。
深層学習による製品形状の把握や、3次元(3D)データに基づくシミュレーターでの検査点の設定などで検査立ち上げ時間を従来に比べて半減した。撮影の軌道計画を自動生成するなど、作業全般を効率化する。
電線製品を扱う茨城工場(茨城県日立市)などで実証を始めた。目視結果とシステムによるデータを比較し、使い勝手を検証する。解析では画像処理と深層学習を融合、繰り返し行って判定精度を高めることを実証する。
日立金属のグローバル技術革新センターが、ロボットAIのエクサウィザーズ、ハンドリング機構のNTNなどと協業して開発した。今後は光学系企業などの参加を促す。AIの活用などで、装置の検討・開発にかかる時間も従来から約30%削減したという。
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日刊工業新聞2021年5月25日