NTTとスカパーが業務提携。商用化目指す「宇宙空間のICTインフラ基盤」とは?
NTTとスカパーJSATホールディングス(HD)は、宇宙空間における情報通信技術(ICT)インフラ基盤の構築に関する業務提携契約を結んだ。低軌道衛星により地上のIoT(モノのインターネット)端末データを集めたり、宇宙で即時に情報を分析したりする仕組みを構築。地上・宇宙間の通信の効率化により、災害対策の高度化などにつなげる。技術実証を2022年に開始し、商用化は26年を見込む。
地上のIoTデータの収集に当たっては、複数のアンテナを使って通信品質の向上を図る技術のMIMO(マイモ)を低軌道衛星に導入することなどを目指す。宇宙での情報分析には高速光通信ネットワークを活用し、顧客の必要とする情報だけを迅速に届けられる枠組みを追求する。
提携の役割分担は、NTTがMIMOや、光信号を空中伝送する通信技術のFSOといった技術を提供。スカパーは衛星・管制システムの経済性や信頼性の向上などを担う。
従来の衛星通信では、衛星が受け取ったデータを全て地上へ戻してから分析するため、通信量がかさむ傾向にある。宇宙で解析を行い、地上には必要なデータだけを届けることで「災害発生時に被害状況を迅速・網羅的に把握できる」(米倉英一スカパーJSATHD社長)といった利点が見込める。澤田純NTT社長は「これからの社会を持続可能にするためには、宇宙がカギ。予測困難な課題の解決は地上だけでは難しい」と述べた。
日刊工業新聞2021年5月21日