洋紙の歴史伝える「紙の博物館」と渋沢栄一の関係

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木材をパルプにする「ポケット・グラインダー」(右は東館長)

国内初の近代的な大規模製紙会社、抄紙会社(旧王子製紙)を設立した渋沢栄一は同社創業後、工場を見守ることができる飛鳥山公園(東京都北区)に居を構えた。紙の博物館は公園の一角にある。製紙会社など約170社の協力で運営され、2020年に70周年を迎えた。模型や実機、歴史的資料などがずらりと並び、洋紙やテーマごとに製紙の歴史を学べる。

入館して目を引くのが、巨大な「ボロ蒸煮釜」。明治初期に輸入され、国内工場で実際に稼働していた。木綿などの破布から、繊維のあつまり(パルプ)を作っていた。さらに進むと円筒形の展示室があり、館内を貫くようにパルプ製造装置「ポケット・グラインダー」が立つ。紙の原料として針葉樹が主流だった明治20年代から、広葉樹が主流になる高度経済成長期まで活躍した。

エントランスで出迎える「ボロ蒸煮釜」

同館は1998年、飛鳥山に隣接する堀船から移転した。鉄筋コンクリート製で、地下1階、地上4階建て。20年3月に大規模に改装した。2階は「紙と産業」、3階は体験コーナー「紙の教室」、4階は「和紙と文化」とし、階層ごとのテーマ性を強めて理解しやすく工夫した。

ただ、コロナ禍の影響で入場者数は例年の半数ほどにとどまっている。それでも、東剛館長はコロナ禍収束を見据え、「渋沢栄一と近代製紙業がテーマの企画展を計画中」だ。開始は9月を予定している。現在、渋沢が主人公の大河ドラマがNHKで放送され、24年発行の新1万円札は渋沢が「顔」となる。紙の博物館にとって好材料が並ぶ。

渋沢が飛鳥山に邸宅を構えたのは、自身が主導して設立した抄紙会社の工場(旧王子製紙王子工場)を見下ろす位置にあったためとされる。第2次世界大戦後、同工場の焼け残った電気室を利用してつくった「製紙記念館」が、紙の博物館の発祥だ。戦後、連合国軍総司令部(GHQ)が分割した製紙各社などが、運営する財団を共同で設立した。国内洋紙産業発祥といわれる地から、長い歴史を今に伝える。

【メモ】
▽開館時間=10―17時(当面16時)▽休館日=月曜日(祝日の場合開館)、祝日直後の平日、年末年始▽入場料・個人=大人400円、小中高生200円▽最寄り駅=JR京浜東北線「王子駅」▽住所=東京都北区王子1の1の3▽電話=03・3916・2320

日刊工業新聞2021年5月21日

キーワード
紙の博物館 渋沢栄一

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