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長岡技科大が圧勝、「WRS」災害対応ロボット競技会

2位京大、3位東北大、4位愛知工大
長岡技科大が圧勝、「WRS」災害対応ロボット競技会

優勝した長岡技科大のレスキューロボット「R-5.0」(アールファイブ)

 長岡技科大、圧勝-。国際ロボット競演会「ワールド・ロボット・サミット」(WRS)災害対応標準性能評価チャレンジのトライアル大会を、長岡技術科学大学が制した。福島県南相馬市で10日に行われた決勝では同大チームが10タスク中、八つで最高成績をたたき出した。長岡技科大のロボットは器用さと走破性を兼ね備え、総合力を発揮した。

 決勝は波乱の幕開けだった。決勝に進んだ4チーム中2チームの機体が故障。愛知工業大学は競技開始20分前にアームが折れた。急きょガムテープで補強して決勝に臨んだが、本番前の猛練習が裏目に出た形だ。バルブを回すなどの作業は制限されたため、機動力を生かして走破系タスクで得点を狙った。

 東北大学も競技前の練習で本体から煙が上がるトラブルが発生。電気回路がショートしていた。機体を分解して部品を点検したところ制御回路は無事だった。修理は配線の交換だけですんだ。不整地走行で得点を伸ばしたものの、3位という結果に終わった。

 2位は京都大学。アームの器用さを生かし、目視点検タスク二つでトップをとった。京大は9日の予選での経験から作業系タスクを強化。一晩でバルブ操作用のコマンドを作成した。ボタン一つでバルブ操作の姿勢になる。操縦者がカメラを見ながら機体の位置を調整するよりも、素早く作業できる。安達真永(まう)さん(修士1年)は「準備していたバルブをすべて回せた点は良かった」と振り返る。

 優勝した長岡技科大もカメラトラブルに見舞われた。アームの先端のカメラが壊れ、代わりに後方確認用のカメラで目視点検に挑戦した。操縦者の野明智也さん(3年)が「予選を受けて走破系タスクは機体性能差で勝てると見込んでいた。パイプ引き抜きなどの作業を特訓したことが功を奏した」と話すように、器用さと走破性の両方で得点を伸ばし、10タスク中8タスクでトップの成績を収めた。

 トライアル大会を通して、新しい課題も浮かび上がった。長岡技科大の野明さんは「今回はカメラトラブルがたまたま致命傷にならなかっただけ。部品故障などが起こることを前提にトラブル対応の練習をしておかないと」と気を引き締める。

 競技会ではロボットを限界まで酷使する。競技を通して幅広い故障モードが明らかになり、改良を重ねることでロボットがタフになっていく。

 経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主催する国際ロボット競演会。2020年に本大会、18年10月にプレ大会を計画している。
優勝した長岡技科大チーム。10月に行われるWRSプレ大会に向け弾みをつけた。

他のメンバーが見守る中、決勝に臨む東北大チーム

京大チームは、カメラでとらえたメーターの値をパソコンで確認しながら遠隔操作

(文・小寺貴之、撮影・北山哲也)
日刊工業新聞電子版2018年3月10日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
 順位に関係なく、すべてのチームで課題が見つかりました。ロボットはスクラップアンドビルドの数がものをいうので、、収穫の多い大会といえると思います。また、この切磋琢磨そのものを工学的にできる点が、WRSの良いところです。標準化されたタスクに対して、各チームがいろんなアプローチで挑戦し、結果は定量的に扱えます。各チームライバルをビデオで撮影して分析しているので、スコアにならない工夫も共有されます。今回は長岡技科大が優勝しましたが、できたことより、できなかったことの方が研究の価値は高いです。となりのチームがどうアプローチして失敗したのか。現場が酷使するとどの機構から壊れていくのか。実用化に向けて回避できない課題が共有され、改良されていくプロセスが見えて非常に面白いです。

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