阪大がデータサイエンス教育で習得させる「9つのドラゴンボール」
基礎―応用、段階的に獲得
数理・データサイエンス教育強化コンソーシアムの中国・四国ブロックへデータサイエンス(DS)教育の普及を図る拠点校は大阪大学が務める。2015年10月に豊中キャンパス(大阪府豊中市)に設立した「数理・データ科学教育研究センター(MMDS)」が中核。学部の枠組みにとらわれない文理融合の横断的な教育プログラムを展開する。鈴木貴特任教授は「DS教育には学生や地域、産業界の声が支えになっている」という。
阪大では教養教育科目の一環として、全学部の学生に教育プログラムを提供している。学部によって教育方針が違うため全学生の必修科目とはなっていないものの、学部生から大学院生まで大半の学生が受講している。
数理と情報、データについて基礎から応用まで段階を追って学べる。一連のプログラムで身に付く、課題解決に欠かせない「計画」や「分析」などの要素を、鈴木特任教授は漫画のアイテムになぞらえ「九つのドラゴンボール」と称する。9要素がバランスよく得られるよう工夫した授業の組み合わせを提供している。
MMDSは産学連携のDS教育として「データ関連人材育成プログラムD―DRIVE」にも取り組んでいる。博士課程の在籍者や修了者が対象で、企業の提供する課題に取り組む勉強会やインターンシップ(就業体験)など実践的な内容。D―DRIVEを全国展開した経験をコンソーシアムの活動に反映し、会議やイベントでの情報発信や助言を行っている。
学部を問わずDS教育を提供するのは一筋縄ではいかない。鈴木特任教授は数学をポイントに挙げる。学部によって高校時代の数学の知識はマチマチで苦手意識を持つ学生もいる。関心を持たせるため「数学と他の教科とのつながりを示すことも重要だ」という。
DS教育を広める体制も工夫が必要だ。鈴木特任教授は「1番の問題は各大学で誰が中心となってやっていくか」だと指摘する。専門のセンターを設置しても、配属できる正規の教職員は1、2人であることが多く、大学全体での支えが問われる。「各大学のセンターの連携が必要。協力して社会的使命を果たせるよう意欲のある大学が増えてほしい」と呼びかける。