【音声解説】弾けるレモンサワー市場、出せば売れる入れ食い状態のワケ

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4回目は「弾けるレモンサワー市場、出せば売れる入れ食い状態のワケ」について食品・飲料担当の高屋記者に聞きました。紹介した記事と合わせて音声配信をお楽しみください。
実際の放送はこちら↓↓↓

酒類市場でレモンサワーが活況だ。缶チューハイや缶カクテルなどそのまま飲めるアルコール飲料「RTD」は、割安感などでビールからの流入が続き、ここ10年で市場が3・6倍に拡大。中でもレモンサワーは2018年あたりから市場拡大が顕著となり、各社、続々と新商品を投入。市場拡大が続く中、高付加価値やノンアルコールなど、商品のバリエーションがさらに広がり、いずれもヒットしている。出せば売れるという入れ食い状態になっている。(高屋優理)

ビールに代わる食中酒

レモンサワー市場は21年に販売数量が前年比30%増の1億4178万ケース(250ミリリットル換算)に達すると見込まれている。レモンサワー市場が伸長しはじめたのは、RTDシェアトップのサントリースピリッツが炭酸水などで割る「こだわり酒場のレモンサワーの素」を発売した18年ごろからだ。

サントリースピリッツRTD部の高橋みどり部長はレモンサワーの市場拡大について、「食中酒がビールからレモンサワーに置き換わったことが大きい」と話す。そのきっかけとなった、こだわり酒場のレモンサワーは「居酒屋で飲むレモンサワーを家庭でも飲める商品設計」(高橋部長)がヒットにつながったと分析。19年には缶商品を発売し、さらに販売数量が伸び、レモンサワー単独のブランドにもかかわらず、RTDの主力ブランドに匹敵する売り上げ規模になっている。

サッポロ 「濃いめ」消費者つかむ

21年に入り、各社が相次いでレモンサワーの新商品を投入する中、新ブランドでヒットを飛ばしているのがサッポロビールだ。3月に「濃いめのレモンサワー」を発売。20年に先行して発売した「濃いめのレモンサワーの素」の缶商品となる。

濃いめのレモンサワーは1カ月で2000万本(250ミリリットル換算)を突破。サッポロにとってRTDブランドでは最速のペースで売れている。各社が商品を投入し、売り場にさまざまなレモンサワーが並ぶ中でのヒットに、ビール&RTD事業部の永井敏文グループリーダーは「濃いめというメッセージが、消費者に響いたのでは」と話す。

今後の商品開発の方向性について永井グループリーダーは「商品が増え、他社がやっていることはやりたくないという流れになっている。健康や若年層の取り込みがカギになるのでは」と示唆する。

もともとRTDはビールに比べ、割安で高アルコールなのが魅力で「手軽に酔える」ことから、ビールの置き換えとして市場を伸ばしてきた。だが、レモンサワーはこれに逆行する流れになりつつある。

キリン 麹と皮、うまみを価値に

こうした中、「高付加価値」にかじを切っているのが、キリンビールだ。キリンは20年10月に「麹レモンサワー」を発売。RTDで初めて麹を入れ、皮ごと搾ったレモンとの相乗効果でうまみを引き立て、食事と合う味わいにした。価格は350ミリリットル入りで174円と100円以下の商品も多いRTDでは高価格になる。キリンビールマーケティング部RTDカテゴリー戦略担当の山崎勝弘ブランドマネージャーは、「レッドオーシャンの市場で他社のまねをしても残れない。価格が高くてもおいしければ納得してくれる」と高付加価値戦略の狙いを明かす。

高付加価値戦略にかじを切ったキリンビールの「発酵レモンサワー」

さらにキリンは3月に「発酵レモンサワー」を発売。レモン果汁を酵母発酵し、濃厚さや香りを増した。価格は麹レモンサワーと同じく174円だが、発売2カ月で2000万本(250ミリリットル換算)を販売。キリンも過去10年のRTD商品で最速のペースとなっている。永井ブランドマネジャーは「レモンには健康的なイメージがあり、健康志向の高さもヒットにつながっている」と分析する。

サントリー 毎日の晩酌に“ノンアル”

商品が飽和していく中で、サントリースピリッツの高橋部長が売れ行きに「驚いた」と話すのが、3月に発売したノンアルコールの「のんある晩酌レモンサワー ノンアルコール」だ。のんある晩酌レモンサワーは商品名の通り、ノンアルコール飲料。レモンサワーはアルコール度数の高いストロング系と言われる商品が主流だが、「競争が激しい中、新たな提案を探す中で出した商品」(高橋部長)だ。のんある晩酌レモンサワーも発売2カ月で1000万本(250ミリリットル換算)を販売し、サントリーのノンアルコールRTDでは最速のペースで売れている。

レモンサワーは決して新しい飲み物ではないが、「居酒屋の味を家庭で」と、各社が商品開発を強化。そこに新型コロナウイルスの感染拡大による巣ごもり消費が後押しし、市場が拡大している。新型コロナの収束が見えない中、今後も「店の味を家で」という傾向は続きそうだ。

コカ・コーラが参戦

18年にはコカ・コーラボトラーズジャパンが「檸檬堂」を発売し、酒類市場に初めて参入した。レモンサワーに絞った商品展開で、アルコール度数やレモンフレーバーにバリエーションをもたせるなどの戦略が奏功しヒット。19年には九州限定販売から全国に広げ、累計約2億4000万本(350ミリリットル換算)を販売。市場全体を押し上げた。酒類に初参入したコカ・コーラのヒットはさらなるレモンサワー市場の成長性を示した。

日刊工業新聞2021年5月5日

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