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「給付金入金までかなりしんどい」「よく戻ってきてくれた」―中小企業での男性育休取得者の声

中小企業で働く、育休を取得した男性はどのような状況にあるのか。2月12―22日、全国のYahoo!JAPANユーザーを対象にアンケートを行い、男性1000人から有効回答を得た。ここから、企業規模500人未満の中小企業(アルバイト・自営業含む)とそれ以上の大企業での傾向を調査した。アンケートに回答した方のうち、後者に該当する2人にインタビューを行った。

 

4人しかいない部署なので、仕事の割り振りが心苦しかった

〇埼玉県、通信機器の法人営業、30代男性、企業規模100人以上500人未満 育休を取得した期間は、2020年11月~21年3月の半年間(10月より有休や出産休暇などを取得していた)。2人目出産に伴い取得。

―育休を取得してよかったことは。

1人目の時には見られなかった日々の細やかな成長を見ることができ、それを妻と共有できたことです。また、1人目の時よりも家事や育児の負担を軽減することができました。妻からは感謝されました。

―育休取得にあたり、どのような業務調整を行いましたか。

取得期間を半年と決めていたため、人員増員はしないことになっていました。しかし、自分を入れて4人しかいない部署なので、仕事の割り振りに関しては心苦しかったです。上司に多くを割り振ることになりました。

―育休取得時の周囲の反応はいかがでしたか。

まずは上司に育休を取得したい旨を相談し、取得の2カ月前くらいに上司から部内周知をしてもらいました。みんな「しょうがないよね」という感じで受け取って、協力してくれました。

―社内で他に育休を取得された男性がいないそうですね。育休に関する情報収集などはどのように行いましたか。

社内で初の男性育休のようです。私の前任の女性が育休を取得した方だったので、話を聞きに行きました。また、労働組合の役員をやっていたため、社内制度に関しては熟知していました。

税や育児休業給付金に関しての情報はインターネットで調べました。調べるまでは収入面での不安があったのですが、半年の育休でもらえる金額がわかり、これなら問題なく取得できると思いました。

―2021年4月より仕事に復帰されたとのことですが、周囲の反応はいかがでしたか。

「よく戻ってきてくれた!」と歓迎ムードでした。育休前に私が引き継いだ仕事もうまく回っているようで安心しました。

―もっと育休が取りやすくなるために、改善すべきと思った点は。

まず、男性も育休を取得できることを知らない人が多いです。お金に関する面も含め、制度など周知する機会や、情報が一元化されればいいなと思いました。

男性から「子どもがかわいいのは一瞬だから」と言われることがありましたが、そういう人に限ってあまり育児に参加していないな…と感じたことも(笑)子どもはもちろんかわいいですが、育児に関わっていれば、それだけじゃない感情がたくさんあると知ることができます。この体験を共有していきたいです。

「取得しやすい環境作り」のノウハウを社内に伝えたい

〇大分県、パンの製造販売、20代男性、企業規模100人以上500人未満 育休を取得した期間は、2020年10月~21年1月の3カ月間。2人目出産に伴い取得。

―育休を取得してみて、よかったことは。

第二子の出産に立ち会えたこと、第一子と妻との家族の時間を十二分に堪能できたことです。また、第二子の出産後、妻に「いてくれて良かった」と言ってもらえました。出産後は妻の回復を第一に2人の子供の世話や家事を行いました。

―育休を取得する前後で、仕事への向き合い方が変わった部分はありますか。

取得前はどうしても仕事を優先させる日が多くありました。

取得後は、それに加えて家族のためにも自分の生活をも守る必要があると分かりました。部下を守り、自分も家族の時間がとれるように、会社に対し、人員の調整や、作業量の相談を多く行いました。

―育休取得にあたり、どのような業務調整を行いましたか。

店長として働き始めた頃、従来は最低限の人数で利益を上げろと会社から言われ続けていました。それが災いして、自分の休みもろくに取れなくなった時期に、第一子の出産を迎えました。

新人がある程度増えた時から、会社の指示よりも従業員の労働環境を優先するようになりました。思えばここから育児休暇取得への環境作りを始めていたと思います。部下に無理をさせないように作業量を調整、作業の無駄も省き、増員。社員及び店長職の仕事を他の従業員にも割り振り、自分の役職「店長」を誰が担当しても役割を果たすことができるようにしていきました。また、ベテランでも新人でも作業量はほぼ同等とし、ベテランに頼っていた部分を削減。その結果、従業員全員の作業効率や知識も上昇し、自分が店長として判断していた判断などを完全に任せられるようになりました。

この状況を作ったので、第二子出産時になんの不安もなく育児休暇の申請をできました。男性店長職が育児休暇を取った前例は聞いたことがなく、社内初なのかもしれません。「取得しやすい環境作り」のノウハウを社内に伝えられるよう資料化していきたいと思います。

―育休取得前、取得後それぞれで職場の反応は。

取得前には「育休を取得しますが、この職場を安定させられるよう変えていきますので協力お願いします」といった旨のメッセージを全員に発信していたので、嫌な顔はされませんでした。復帰後は別の店舗に所属となりましたが、そこでも煙たい顔などされず、上司からも「待っていたよ」と暖かく迎えてもらいました。

―育休取得にあたり、収入面での不安はありましたか。

そもそも基本給がそんなにあるわけではなく、給付金の金額を計算してもこれ以上長い期間の取得は金銭的に厳しいと判断し、育休期間を3カ月としました。

ただ、育児休業給付金の入金まで時間が思ったよりかかり、かなりしんどい思いをしたのと、給与からの住民税の特別徴収がなくなり半期分の住民税納付書が届いた時には絶望感が酷かったです。なんどか親族に借りて払い切りました。

給付金については育休取得経験のある女性従業員や、自分が取得するにあたって対応してくれた会社の本社担当者から説明を受けました。ただ、住民税については市から振り込み用紙が届いてから、特別徴収が無くなることに気づいた形になります。

―もっと育休取得しやすい環境にするために必要なことは。

収入面での変化や、今回の自分の住民税の件など注意すべき事項が事前にまとめられていれば、もっとハードルを低くすることが可能かもしれないですね。最初から調べずわかっていれば、例えば保育園の入園方法や、見学などに時間を使えたかもしれません。

私としては、育児休暇取得はあくまで当たり前の権利であり会社はいつでも従業員に取得させることのできる環境作りをしておくべきだと、それが“権利を与える側の義務”であるという強気な気持ちを持ち続けました。その方が取得後にあらゆる問題が起きた時に対応しやすいかと思います。

この記事は日刊工業新聞とYahoo!ニュースによる共同企画です。

日刊工業新聞2021年5月13日

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ニュースイッチとYahoo!ニュースは、Yahoo!JAPANユーザー2000―3000人に対してテレワークや副業、男性育休についてアンケートを実施しました。その結果を詳報すると同時に、それぞれの実態に迫ります。

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