LGBTの人たちを応援!福利厚生の制度申請に使える“証明書”とは
賛同続々、多様な人たちに家族の“当たり前”を
一般社団法人Famiee(ファミー、東京都千代田区、内山幸樹代表理事)は、民間による同性パートナーのための「パートナーシップ証明書」の発行を始めた。賛同する企業において、同証明書を持つ人たちが“新しい形の家族”として社内の福利厚生制度の申請時などに同証明書を利用できるようになる。多様な家族が社会的に認められ、安心して暮らせるように後押しする。(梶原洵子)
同証明書の発行開始を発表した2月25日時点で、日本航空(JAL)やパナソニックコネクティッドソリューションズ社などを含む40社以上が利用を表明し、多くの賛同が集まった。ファミーの内山代表理事(ホットリンク代表取締役グループ最高経営責任者)は「民間の力で、変えられるところから変えていきたい」と意気込みを語る。
同性パートナーは、異性間の夫婦では当たり前のことが認められていない。相続権や手術同意書に同意する権利、特別養子縁組の引受権がなく、配偶者として育児休業や介護休暇を取得できない。
複数の自治体でパートナーシップ制度が導入され始めたが、まだ日本は過渡期で、自治体ごとのフォーマットの違いや引っ越すと無効となるなどの課題がある。そこで民間から変化を後押ししようと、2019年にファミーが設立された。同性パートナーが直面する困難には、育児休業のように、民間が解決できるものもある。
同証明書の開発にあたり、「戸籍のように数百年でもずっとデータが保持されることが重要だと考え、ブロックチェーン(分散型台帳)技術を採用した」と内山代表理事は話す。同技術はネットワークに接続した複数のコンピューターがデータを共有することで、データの耐改ざん性・透明性を実現できる。中央管理者がいなくても、半永久的に証明の仕組みが稼働する。
同証明書はスマートフォンのアプリ上で完結する。申請者はファミーのアプリをダウンロードし、画面に従って書類を準備し、利用申請する。ファミーがサーバー上で申請通知を受けると同時に、委託先のTRUSTDOCK(東京都千代田区)が法令に準拠した方法で本人確認を実施。情報は理論的に解読不可能な方法で符号化されてブロックチェーン上に保存される。
証明書を提出された企業は、検証サイトで証明書の記載情報から生成される符号とブロックチェーン上に保存されている符号化されたデータを比較し、真正性を確認する。
第1弾として、パートナーの関係性をアプリ上での宣誓によって確認するファミー第二種(世田谷区型)の発行を始めた。現在アプリはiOS版のみで、アンドロイド版は21年内にも対応する。また第二種と違う方法で関係性を確認する証明書や、親子関係などにも対応していく考え。
内山代表理事は「LGBTの人たちを応援する企業は、声を上げてほしい」と訴える。気持ちが伝わらなければ、本人は受け入れられているかがわからず不安になる。ファミーへの賛同は応援の方法の一つだ。民間の応援が集まり、多様な人が暮らしやすい社会となることが期待される。