ニュースイッチ

車載用リチウムイオン電池のリサイクル体制構築へ、非鉄メーカー各社の戦略とは?

車載用リチウムイオン電池のリサイクル体制構築へ、非鉄メーカー各社の戦略とは?

DOWAホールディングスはリチウムイオン電池のリサイクル能力を拡大する

非鉄メーカー各社は、車載用リチウムイオン電池(LIB)のリサイクル体制を構築する。DOWAホールディングス(HD)はリサイクル前工程受け入れ能力を6倍に拡大し、JX金属は新会社を設立し、処理能力増大の実証プラントを稼働する。2025年以降は電気自動車(EV)を含む次世代車が年50万台以上廃車になると予想される。使用済みLIB増加に備え、各社は処理能力増強や技術開発を進める。(村上授)

DOWAHDは、6月から使用済みLIBの前工程リサイクル能力を21・6トンに高める。秋田県大館市のグループ会社既存焼却施設で、LIBをはじめ、電気・電子機器類の処分に必要な許認可を取得した。間口の広い固定床炉で大型車載用LIBを解体せず熱処理するため、安全に不活性化できる。

前工程で不活性処理した電池は、後工程の既存再資源化ラインで鉄やアルミニウム、銅、コバルト・ニッケル混合物などに分離回収し、それぞれ製錬原料に再資源化する。コバルト・ニッケル混合物について現状は、不純物が多く、次工程の製錬所では前処理が必要になる。

そこで「製錬所での前処理を簡略化できるよう、混合物から不純物を取り除く技術開発や実証に取り組む」(同社)方針だ。

JX金属は20年から茨城県日立市の事業所に小型試験設備を設け、一度にキログラム単位の処理能力で実証を重ねてきた。車載用LIBを熱処理で無害化し電池粉を生成。その中に含まれるニッケル、コバルトを硫酸で浸出後、独自の溶媒抽出技術によって電池原料として使える硫酸コバルト、硫酸ニッケルを回収する。

これまでの処理はキロベースだったが、次の段階としてトンレベルに高める拠点を福井県敦賀市に開設。21年10月から実用化に向けた技術開発や実証試験を始める。

電池関連産業の国際競争力強化を目指す団体、電池サプライチェーン協議会(東京都中央区)の森島龍太業務執行理事は、「20年に欧州委員会で欧州バッテリー規制が提案されるなど世界的に電池リサイクルの重要性が強く認識されはじめた。その環境変化が各社の動き(リサイクル体制強化や技術開発)を後押ししている」とみる。また、電池リサイクルが普及するには技術に加え「リサイクル枠組みの経済合理性確保が大事」(森島業務執行理事)と指摘する。

車載用LIBリサイクル能力強化の動きはまだ始まったばかり。今後、さらなる処理能力拡大や技術開発の加速が期待される。

日刊工業新聞2021年5月11日

編集部のおすすめ