スマートロック型の入退室管理システム、中堅・中小企業の需要が高まる事情
フォトシンス(東京都港区、河瀬航大社長)は、スマートロック型入退室管理システム「アケルン」を手がける。スマートフォンアプリケーション(応用ソフト)や社員証、交通系ICカードでオフィスのドアを解錠、施錠でき、物理カギを持ち歩く必要がない。また、全社の解錠履歴をクラウドに集約することで、いつ、誰が、どこのカギを開けたかを一元管理でき、労務管理にも役立つ。
従来の大規模な入退室管理システムと異なり、導入時の配線工事が不要で、既存のドアに機器を後付けして利用できるのが特徴。初期費用なしで1カ月から月額制で使える。部屋単位での入室制限の設定や、社員の入退社による権限付与や停止もクラウド上で迅速、柔軟に行える。
セキュリティーニーズや、働き方改革を背景とする労務管理意識の高まりを受け、入退室管理システムを導入していなかった中堅、中小企業からの需要が高まっているという。累計5000社超に納入した。
コロナ禍の影響で企業がオフィスを縮小・移転する動きがあるが、河瀬社長は「ワークプレイス自体は減るものではない」とみる。「経験したことがないほどコワーキングスペースなど分散型オフィスでの導入が増えている」(河瀬社長)ため、働き方の変化がむしろ追い風となっている。
フォトシンスは2014年に設立。「カギをなくしたり、使うたびに探したりするのは面倒だ」(同)という生活する上でのシンプルな不満を解決する手段として、住宅向けの後付け型スマートロックを開発した。だが、参入障壁は高く、16年に撤退。法人向けに方向転換した経緯がある。
同社は今、念願である住宅向けサービスへの再参入を目指している。1月に建築用錠前大手の美和ロック(東京都港区)と共同出資会社を設立。錠前とスマートロックの融合による新たな市場を作る計画だ。すでに複数のマンションへの納入が決まっているという。「利用者にとっては物理キーでもスマホでもドアを開けられるようになり利便性が上がる」と説明する。
「共働き世帯の増加により、一般家庭でも家事代行の利用などで多くの人が家に出入りするようになるだろう」と展望を語る。「気がつけば全てのマンションで新サービスが使われるようになるのでは」と期待する。
「一つのIDで全ての扉を開け閉めできる『キーレス社会』を作る」。河瀬社長が目指す世界が実現するのはそう遠くないかもしれない。(苦瓜朋子)