環境省の“撤退戦”!ワーケーション含む働き方改革で動き出した改革
未来のための撤退戦―。環境省が職員の働き方を見直す上でのキーワードだ。担当以外の仕事に業務時間の20%を使える「霞が関版20%ルール」、国立公園で仕事をしながら余暇をとるワーケーションなどの目玉施策があるが、根底にあるのは業務量の削減だ。職員が意欲や創造性を発揮できる職場を目指す。(編集委員・松木喬)
2020年1月15日、参加を希望した職員70人が「選択と集中」実行本部を立ち上げ、環境省の働き方改革の議論が始まった。前日の記者会見で小泉進次郎環境相は「従来の延長線上で続けていくだけではなく、畳むべき業務から撤退する」と語り、「未来のための撤退戦」を奨励すると宣言した。
同省の前身である環境庁は公害対応として発足したが、現状は気候変動対策のような地球規模の課題や福島復興などにも業務が広がった。一方、組織の規模は追随できず、職員の負担が増していた。
秘書課の前田大輔課長補佐は「役所にこもっていて、新しいモノを採り入れる時間がなくなった」と話す。「脱炭素」など新しい課題への感度が鈍り、「社会変革担当省」(小泉環境相)を名乗れるのか疑問だった。
また、「職員が自身の成長やキャリアを語れるのか」(横川拓郎秘書課課長補佐)という危機感もあった。増える仕事をこなすだけでは創造性を発揮できず、成長を実感できない。優秀な人材が育たなければ将来、国民生活向上の役割を果たせなくなる。
そんな強い問題意識から「選択と集中」実行本部の議論は過熱した。20年8月に公表した結論には、優先度が低下した事業を放置しないために「5年以上継続している事業の廃止・見直し」と盛り込んだ。実際、21年度概算要求でエネルギー対策特別会計の450億円分の事業を廃止や見直しの対象とした。通常、始めた事業の廃止には抵抗がある。同省は管理職の人事評価で業務合理化をプラス評価し、廃止に前向きになれるようにした。
仕事量の調整と並行し、職員の意欲を生かす目的で20%ルールを試行導入した。自己研さんのシンポジウムや勉強会への参加を通常業務として認めた。省外に出て課題への感度を高め、政策立案に反映するためだ。他にも所属以外の課・室へ参加する「省内副業」、部署の垣根を越えたプロジェクト推進も20%ルールとして認めた。
管理職は部下から20%ルール適用の届け出があると、負担にならないか見極め時間を調整して協力する。20%ルールも利用が評価される仕組みとして、機能する制度にした。これまで50人前後の職員から届け出があった。
動き出した改革だが、形骸化が課題だ。廃棄物規制課の山王静香課長補佐は「みんなで時間をかけて議論した。省内パブコメも出し、多くの職員の意見も聞いた」とし、推進力を語る。前田課長補佐は「働き方を考えるタスクフォースに新しいメンバーを随時入れ、熱量を維持する。改革のカルチャーを作りたい」と対策を語る。