ソフトバンクがSUBARUと自動運転車で実証。5Gで合流支援に成功!
実地検証に成功
「第5世代通信(5G)の特徴として、基地局に近い位置にサーバーを置くことで、低遅延で処理を行うことが可能。この技術はコネクテッドカー(つながる車)と親和性が高い」。ソフトバンク先端技術開発本部先端コネクテッド推進課の河村浩彰課長代行は、SUBARU(スバル)と進めてきた自動運転車関連の実証実験についてこう説明する。
両社は2020年8月、5Gを活用した車両の合流支援の実地検証に成功した。具体的な利用例として、高速道路などで自動運転車が合流路から本線車道へスムーズに合流することを想定した。
この検証では、車両の各種情報を5Gネットワーク経由で基地局近くにあるマルチアクセス・エッジ・コンピューティング(MEC)サーバーに伝送した。MECは、端末から近い位置にデータ処理機能を配備することで通信の最適化や高速化を図る技術。MEC側で得た車両情報を用いて、合流路を走行する自動運転車が本線車道を走行中の車両に衝突する可能性の予測計算を行った。
衝突の恐れがある場合は、MEC側から自動運転車に警告や減速指示を行い、自動運転車は車載センサーで取得した周囲の情報と併せて適切な制御情報を計算する。この制御情報を基に、本線車道を走行する2台の車両間への合流に成功した。
環境を整備
検証は、スバル研究実験センター美深試験場(北海道美深町)で実施。このテストコースにソフトバンクの可搬型設備「おでかけ5G」を設置し、局地的に電波品質の高い5G環境を整えた。加えて同社の高精度測位サービス「イチミル」も活用。誤差数センチメートルの測位を可能にする仕組みで、必要な車両位置情報の取得に役立った。
多様な連携必要
ただ、合流支援の仕組みの実用化に向けた課題は多そうだ。高速道路だけで考えても、合流路はインターチェンジやパーキングエリアなど多数ある。そうした場所を網羅するには、MECサーバーの小型化や低廉化がこれまで以上に求められる公算が大きい。ソフトバンクの河村課長代行は「MECサーバーの最適配置は、引き続きの検討課題として取り組んでいく」とした一方、具体的な検討の道筋やスケジュールについては明言を避けた。
また、データの取り扱いの観点では「公共性が高い情報を扱うので、行政や業界の方々を含めて多様な連携が必要」(河村課長代行)。通信事業者はセキュリティー面での信頼向上も求められる。(編集委員・斎藤弘和)