楽天モバイルへ転職のソフトバンク元社員の逮捕が契機、従業員と秘密保持契約の企業が激増

  • 1
  • 8

主たる漏えいルートは中途退職者―。情報処理推進機構(IPA)がまとめた「企業における営業秘密管理に関する実態調査」によると、情報漏えい事例が発生したと答えた企業は2016年調査比4・4ポイント減の5・2%となった。ただ、漏えいルートでは「中途退職者」が同7・7ポイント増の36・3%に増加。内部不正を原因とする情報漏えいの発生は減少傾向にない。テレワークの普及に伴い、秘密情報管理の観点でのクラウドサービスの扱いに関する対策も課題となっている。

IPAは情報漏えい事例が起きた企業が減少した要因について「企業における対策の進展、攻撃の巧妙化など複数の要因が作用した結果」と分析する。

従業員と秘密保持契約を結ぶ企業の割合も同10・5ポイント増の56・6%に増加した。1月には第5世代通信(5G)などの技術情報を不正に持ち出したとして、楽天モバイルへ転職したソフトバンク元社員が逮捕された。営業秘密漏えいに関する報道などを受け、内部不正による情報持ち出しの被害抑制に向けた対策を講じる企業が増えている。

漏えいルートは、役員や正社員などの「中途退職者」による漏えいが増えた一方、「現職従業員の誤操作・誤認識」による情報漏えいの割合は同22・6ポイント減の21・2%と大幅に減少した。現職従業員等のルール不徹底は19・5%だった。情報の流出先は「国内の競合他社」が37・8%と最多。取引先や仕入れ先、退職者の転職先なども挙がった。

テレワークで営業秘密を扱う場合の対策の導入状況では、まず通信時の保護対策を行う企業が多く、「クラウドサービスで秘密情報を扱う場合の対策」は17・7%と、クラウド対策まで踏み込んで取り決めている割合は低い。

クラウドサービスにおける営業秘密の不正利用防止のために実施している対策についての設問でも、不正操作の証跡確保に相当する「ログ(履歴)分析の実施」が24%にとどまるなど、比較的高度な対策までは十分に進んでいないことも分かった。

IPAは「役員や従業員と秘密保持契約を締結する企業が増えた一方、情報漏えい対策を従業員に周知していない割合も増加しており、心理的抑制効果の観点では注意が必要」とコメントしている。

同調査は20年10―11月に実施。2175件から回答を得た。

日刊工業新聞2021年3月30日

関連する記事はこちら

特集