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総務省が料金指摘、見直し迫られる携帯通話料値下げ

携帯通信各社の従量制音声通話料に対する値下げ圧力が強まりそうだ。総務省はこの料金が10年以上変わっていないと指摘。有識者からも問題視する意見が相次ぐ。実際に大手3社の音声通話事業の利益率は高止まりしており「通信会社はもうけすぎだ」との批判が再燃しかねない。各社はデータ通信料を引き下げたばかりで収益への影響が懸念される中、かけ放題などの通話関連サービスの見直しを迫られる可能性がある。(斎藤弘和)

携帯通信大手3社における従量制の音声通話料は、10年以上前から3分当たり120円(消費税抜き)で変わっていない―。総務省は通信市場の競争環境などを議論する有識者会議「競争ルールの検証に関するワーキンググループ(WG)」の場で、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクをやり玉に挙げた。

相次ぐ新料金

携帯通信各社は政府の値下げ要請を勘案し、以前よりも格安にデータ通信を使える新料金プランを投入してきた。これに加え、短時間の音声通話は月額基本料の中に含めたり、オプションでかけ放題を提供したりしている。例えばドコモが26日に提供を始めた新プラン「アハモ」は、データ容量20ギガバイト(ギガは10億)が2700円で、5分以内の国内通話は何度でも無料。かけ放題オプションは1000円だ。

ただ、WG構成員を務める甲南大学の佐藤治正教授は「(市場の動向として)通話が減っている割には、(大手携帯通信事業者の)売り上げは増えている。かけ放題で、ある程度のお金を払っている人たちが、実はそれほど長い時間使っていないのか(もしれない)」と分析する。

大手批判再燃

総務省によると、2009年度以降の10年間で携帯電話やPHSから発信される音声通信時間は10%減った。一方で17―19年度、大手3社の音声伝送役務の営業利益率は軒並み高水準で、ドコモは3年連続30%以上だった。政府はこれまで携帯通信大手の“もうけ過ぎ”を度々批判してきたが、そうした機運の再燃も考えられる。

携帯通信各社は、音声通話料の引き下げ圧力が強まりかねない状況は頭痛の種となる。大手の関係者は「現在はデータ通信料の値下げが一段落したばかり。次は音声の話になると想像はしていたが、『来たか』という感じだ」と身構える。費用対効果が疑問視されている、かけ放題の枠組みについて見直しを余儀なくされる可能性も出てきそうだ。

「勝手に割り」

実際、野村総合研究所の北俊一パートナーは「通話をしなかった月は勝手に割り引きがされる音声定額プランの登場を期待している」と述べた。データ通信では、ソフトバンクの「メリハリ無制限」のように、使用量が少なかった月は自動的に割り引きがなされるプランが既にある。WGでは4月に携帯通信事業者へのヒアリングが行われる。その場で各社が音声通話料金に関してどんな認識を示すのか注目される。

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