ランニングフォームを点数化するカシオ、新サービスを生んだ開発者の不満

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腰に取り付けた小型センサー

生活者の身体的特徴に合わせてサービスをパーソナライズ(個別最適化)する取り組みがさまざまな業種で増えている。企業の研究成果が詰め込まれたガジェット(機器類)にも、同様の動きが目立ち始めた。企業がパーソナライズに挑戦する背景や目的、それぞれが描く将来像に迫る。

カシオ計算機は、アシックスと共同開発したランナー向けサービス「ランメトリックス」の提供を3月に始めた。最大の強みは、ランニングフォームの改善や体作りの個別最適化に必要な情報の取得・分析が、手のひらサイズの小型センサー1個とスマートフォンで完結する点だ。センサーは9軸センサーを搭載し、骨盤の動きを高精度に捉える。腕時計などで長年培ったセンシング技術を活用して開発した。

専用アプリケーション(応用ソフト)に情報を送ると点数やグラフ、3次元(3D)アニメーションなどで装着者の傾向をすぐに見える化する。これらの分析はアシックスの持つ膨大なデータや知見によって実現した。

アプリで示される点数を人と比べると同じ数値が出ることがあるが、背景に表示される六角形のグラフはそれぞれ異なる形をしている。点数は理想のフォームと比べた時の現状を表し、グラフは接地や重心移動などランニングフォームの特徴を表している。

より高いスコアを目指すのも目標の一つだが、見える化の本質はそれぞれのランナーにとってより安全で、かつ各自で設定した目標に適したランニングフォームの実現を支えること。グラフによる見える化は、個々に異なる改善点を分かりやすく示す工夫の一つだ。

そもそもの開発のきっかけは、開発者が抱いた不満だった。スポーツ健康インキュベーションセンターの西坂信儀氏はランニングが趣味。「自分に合った指導を手軽に受けられる仕組みがなかったのが始まりだ」と語る。手軽に始めやすい運動だからこそ、同様の課題を抱えるユーザーは多いと分析した。

サービス展開で気をつけたのが、カシオを代表する腕時計「G―SHOCK」の位置付けだ。ランメトリックス用の製品は用意しているが、サービスの中心はあくまで小型センサーで、腕時計なしでも利用できる仕組みにしている。

ランメトリックスの走行データの比較。スコアは同じでも人によってグラフの形状が異なる

G―SHOCKは強いブランド力を持つが、ランニング向けのスマートウオッチはすでに多く世に出ている。ランナーが既に使っている製品と併用できる仕組みにすることで浸透を図る狙いだ。

同センターの堀清司ビジネス企画室長は「既存の形にとらわれず新たな価値を提供したい」と意気込む。10月にはウオーキング向けサービスも展開し、拡大が見込めるスポーツ市場での成功を狙う。

日刊工業新聞2021年4月1日

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カシオ計算機

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