カシオが挑むプロジェクター市場の新領域、コロナ禍で変化したニーズに対応
用途の変化に合った製品開発
カシオ計算機は学校や会議室などで使う中型プロジェクターから撤退し、新領域への転換を始めた。小型化と明るさを両立できる技術を強みとし、用途の変化に合った製品開発に力を入れている。
第1弾としてA5サイズの小型プロジェクター「フォーサイトビュー」を3月下旬に発売する。ビジネスバッグに入る大きさと、明るい部屋でも使える輝度の両立が特徴。医薬情報担当者(MR)のような客先を訪問する営業活動での利用を意識した。
近年のプロジェクター市場は減少傾向で、新型コロナウイルス感染拡大の悪影響も大きい。それでも完全撤退しない理由は「特殊な技術資源を持ち、なおかつ成長領域が顕在化しているためだ」(古川亮一プロジェクション戦略部長)。
カシオのプロジェクターは、レーザーと発光ダイオード(LED)を組み合わせた光源とDLP方式の採用が特徴。明るさと小型化、省電力化の両立を得意としている。フォーサイトビューの商品化にあたっても光学設計技術などの進化と併せて、独自の光源技術の存在が大きい。
新商品が目指した“持ち運べる大画面”は、質の高いプレゼンテーションの実現と、1カ所に縛られない柔軟な働き方の両方に対応できる。コロナ禍において対面での商談の機会が大幅に減る中、小型で明るいプロジェクターが活躍する場面は多いと見ている。
同社は併せて“プロジェクションAR(拡張現実)”市場の成長にも注目している。建物やロボットなどに映像投影の機構を内蔵することで、施設案内や機器操作の手順などの情報を現実空間に表示する領域だ。
作業の省人化や非接触化などの高まるニーズ受けて強い引き合いが見込める一方、小型化と明るさ、防塵性といった厳しい条件に対応する必要がある。古川部長は強みの独自技術を生かすことで「組み込み型の市場を自ら作っていけるチャンスを迎えている」と意気込む。(国広伽奈子)