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スマートウォッチ市場はさらに加速、「ランニング」と「健康管理」で勝ち抜くカシオ計算機

カシオ計算機社長・樫尾和宏氏インタビュー
スマートウォッチ市場はさらに加速、「ランニング」と「健康管理」で勝ち抜くカシオ計算機

カシオ公式インスタグラムより

―2020年度(21年3月期)は中期経営計画2年目でしたが、取り下げました。

「アフターコロナに万全の体勢で臨むため、20年度は数字を追わず構造改革に集中する期間とした。全社改革ではデジタル化を徹底し、営業はエンドユーザー中心の導線に変えるべくDX(デジタル変革)を進める。事業面ではプロジェクターで既存領域からの撤退を決めた。レジスターも4月以降、製品群をキャッシュレス決済対応製品のみにする。関数電卓は今後オンライン授業で使われるための戦略が重要になる」

―改革対象の筆頭だった楽器事業は対照的に黒字化しています。

「改革の成果に加え、巣ごもり需要をきっかけに新たなユーザー層が見つかった。この需要は一定期間、世界的に続く。改革完了を機に、鍵盤以外の楽器や情操教育への展開なども積極化したい」

―腕時計市場はコロナ禍の影響を大きく受けました。時計事業をどう立て直しますか。

「既存市場に頼る製品は、例えば自社EC(電子商取引)サイトや専門店などG―SHOCK(の資産)を生かせないか考えている。成功事例の横展開も重要。(ECが活発な)中国事業の取り組みはまさにアフターコロナの世界だ。今は自社ECサイトを充実させやすい環境。この機を逃してはならない」

―スマートウオッチ市場の戦略は。

「米国では20年上期にスマートウオッチの販売が腕時計を上回った。このトレンドはさらに加速するだろう。特にランニングと健康管理の2領域で日本・アジアの市場を海外企業に取られないよう、アシックスのように適切なパートナーと組み勝ち抜く。投資も含めて積極的に動きたい」

―環境問題などの社会課題にはどのような姿勢で対応しますか。

「未来について企業が“一人称”で考えられているかが問われている。新設部署の未来創造センターで、ミレニアル世代を中心に議論を深めて発信できる企画を検討している」

*取材はオンラインで実施。写真はカシオ計算機提供

【記者の目/急激な環境変化が進化後押し】

G―SHOCKの課題は、3個以上の購入経験があるロイヤルカスタマーの存在を活用し切れていない点。ブランドや腕時計のファンの囲い込みに向け、個々の顧客に向き合うサービスの充実を掲げる。生産・営業改革と同様、コロナ禍による急激な環境変化が進化を後押ししている。(国広伽奈子)

カシオ計算機社長・樫尾和宏氏
日刊工業新聞2021年1月26日

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