「ペイペイ」「d払い」「auペイ」、スマホ決済の勝ち残りは誰だ

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中山ペイペイ社長はコロナ禍で消費者の意識に変化があると指摘(同社の事業説明会、1日)

携帯通信各社が展開する、スマートフォンを活用した2次元コード(QRコード)決済が底力を試されている。政府のポイント還元事業や、自社による大規模キャンペーンなどで一定の顧客を確保したものの、他のキャッシュレス決済との競争は依然、激しい。新型コロナウイルス感染症の影響で消費者の意識や行動も変わりつつある。携帯各社はこうした潮流を捉えつつ、決済アプリケーション(応用ソフト)の機能強化を進められるのか。(取材=斎藤弘和)

顧客基盤確保も競争熾烈 「マイナ」に過度な期待禁物

「サービス開始が結果的に後発となったことは反省すべき点もあるが、現時点においては他社に遜色ない」。KDDIの長野敦史金融決済ビジネス部長は、自社のスマホ決済「auペイ」の競争力に手応えを示す。

auペイのサービス開始は2019年4月。NTTドコモの「d払い」、ソフトバンク系の「ペイペイ」よりも遅かった。だがKDDIは20年2―3月に、利用金額の最大20%を還元するキャンペーンを行うなどして猛追。3月末時点の会員数は約2350万人となった。同時期の他社サービスの会員数はペイペイが2700万人、d払いは2526万人。携帯通信各社は一定の顧客基盤を確保したと言える。

KDDIの「auペイ」は後発だったが、積極的なキャンペーンなどで加入者を伸ばした

各社が顧客の獲得や定着を図るに当たっては、政府が19年10月から実施した「キャッシュレス・ポイント還元事業」も追い風になったようだ。ドコモの田原務ウォレットビジネス部長は「利用者や取扱高は(ポイント還元事業が)始まる前と後で、かなり数字が違っている」と分析する。

同事業は20年6月で終了したが、政府はマイナンバーカードを活用してキャッシュレス普及と消費活性化を狙う施策「マイナポイント」の申し込み受け付けを7月1日に始めた。利用希望者は、申込時にキャッシュレス決済手段の中から一つを選び、チャージまたは買い物をしてポイント還元を受ける。携帯通信各社は自社サービスを選んでもらうべく、追加還元などの特典を展開している。

ただ、1人の消費者がマイナポイント申込時に選べる決済サービスは一つだけ。携帯通信各社のスマホ決済には、クレジットカードや電子マネーとの競争が待ち受ける。また総務省によると、マイナンバーカードの1日時点の交付枚数は2225万枚で、人口に対する普及率は17・5%にとどまる。今後、交付が大きく伸びるかは不透明で、携帯通信各社がマイナポイントに過大な期待をかけることは禁物と考えられる。

他方、今春以降は新型コロナの影響で、営業を自粛する飲食店や小売店が続出。携帯通信各社にとっては、加盟店の新規開拓や決済手数料の上積みにつなげにくい状況となった。7月は首都圏などで感染者数が増加傾向に戻っており、苦境に陥る店舗が増えて携帯各社の勢いに水を差す可能性もある。

「スーパーアプリ」化推進 コロナ禍、EC対応に活路

スマホ決済を取り巻く環境は必ずしも順風満帆でないものの、携帯通信各社は勝ち残りに向けて自社サービスの機能強化に余念がない。それを象徴する言葉が「スーパーアプリ」だ。決済アプリ上から、決済以外の多様なサービスを起動したり利用したりできる仕組みや考え方を指す。ソフトバンクグループ傘下のペイペイ(東京都千代田区)や、KDDIはスーパーアプリ構想を掲げている。

一方、ドコモは「ミニアプリ」の展開に力を注ぐ方針だが、「方向性としてはスーパーアプリに近い」(田原部長)。ミニアプリは、d払い加盟店の企業が自社で提供している事前注文や事前決済といったサービスを、d払いアプリ上で円滑に使えるようにするもの。今後、1カ月当たり1―2本のミニアプリを投入する計画だ。9日には、インフォリッチ(東京都渋谷区)が手がけるモバイルバッテリーのシェアリングサービスのミニアプリを追加した。

ドコモは「d払い」のミニアプリ拡充を急ぐ(バッテリーシェアリングのイメージ、ドコモ提供)

携帯通信各社がスーパーアプリ化を推進するのは、機能の拡充に比例して決済回数も伸びるとの認識が背景にある。決済回数が増えれば自社へのエンゲージメント(愛着)も向上し、携帯電話サービスの解約防止にも寄与すると考えている。

新型コロナもマイナスの影響ばかりではない。ペイペイ社が6月、衛生面の観点で抵抗がある決済手段を消費者に聞いたところ、69%が現金を挙げたという。誰が触ったか分からない紙幣や硬貨の使用を避けたいと考えてスマホ決済を積極的に使い始める人は増えてきそうだ。加えて外出を控える傾向に伴い、電子商取引(EC)の伸びも期待できる。中山一郎ペイペイ社長は「オンラインの加盟店も、どんどん増やす」と意気込む。

コロナ問題が顕在化する前の携帯通信各社は、ポイント還元率の高いキャンペーンでスマホ決済の顧客獲得を図る事例が目立った。だが、大規模な販促策は資金面を考えても長くは続けにくい。地道にアプリの機能や利用シーンを拡充しつつ、使い勝手にも気を配る。こうした基本を再度、徹底する局面に来ていると言えそうだ。

日刊工業新聞2020年7月28日

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