創立100年の三菱電機、ビジネスモデルの変革で成長の限界に挑む
優等生、大胆さ発揮の時
1日に創立100周年を迎えた三菱電機は成長の限界に挑む。石橋をたたいて渡る堅実さと、不採算事業をためらわずに切る大胆さを併せ持ち、この20年間、日立製作所や東芝を尻目に電機業界の“優等生”であり続けてきた。ただ、徹底した事業の選択と集中がデジタル変革(DX)の時代に成長余地を狭めた側面は否定できない。限界を打破すべく、次の百年の計が問われている。
【「絞りすぎた」】
「1990年代後半からの選択と集中で絞りすぎた。売り切りのビジネスに特化してきたが、運用・保守などバリューチェーンを広げて業態を変えていかないといけない」と三菱電機社長の杉山武史は危機感を強める。
三菱電機が営業赤字になったのは連結決算の開示を始めた69年以降で98年度と01年度の2回しかない。この時はDRAMなど半導体事業への大型投資がたたった。財務が大幅に傷み、そこから選択と集中の10年が始まる。杉山は「当時弱かった事業を切ってきた歴史がある。情報通信事業はリソース投入を止めた」と振り返る。IT部門が全社の成長エンジンとなっている現在の日立製作所との違いは選択の結果だ。
財務を立て直した後の2010年代は成長投資にかじを切り、強くなったFAシステムや自動車部品、エアコン事業などが好業績をけん引した。ただ、新型コロナウイルス感染拡大の影響だけではない、既存ビジネスモデルへの閉塞感が足元で漂っている。
【DX攻勢急ぐ】
DX全盛となる次の100年への針路が求められる。杉山は「社会に必要とされたから100年続いた。次の100年も社会から必要とされる会社でないといけない」と理念を変えるつもりはない。これを現代風に翻訳すれば、社会課題を解決するソリューション中心へ事業構造の変革を目指すということだ。
ソリューション型への移行にはやはりITの競争力が不可欠だ。「20年前にリソース投入を絞った結果、IT部門の年齢構成がいびつだ。経験者採用を含めて人員を補強しないと今後の事業は難しい」と杉山も認める。大型M&A(合併・買収)には消極的な社風だが、今こそ併せ持つ大胆さの方を発揮する時かもしれない。
三菱電機は100周年を目前にした直近数年間で、労務問題や品質不正、サイバー攻撃による情報漏えいなど不祥事が相次いだ。ガバナンス体制などにほころびがないかのセルフチェックは社会的責務だ。
79年入社の杉山は「(問題につながるような)社内風土の変化をこれまで感じたことはなかった。ただ、変化していないことが問題だ」と最近になって考えを改めた。高度経済成長後のバブル景気へ続く時代と、現在では取り巻く環境が大きく異なるからだ。
次の100年に向けてビジネスモデルも組織も変革が必要だ。(敬称略)
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