コロナワクチン用の保冷・冷凍庫を相次ぎ投入のエスペック、モノづくりの強みの活かし方
エスペックが主力である環境試験器のノウハウを生かし、需要拡大が期待される医療分野に照準を合わせている。同社は半導体や車載部品をテストする際、さまざまな温度・湿度などを再現する技術に強みを持つ。十八番(おはこ)の温度制御技術を基に、新型コロナウイルスワクチン用の定温輸送保冷庫や超低温対応の小型冷凍庫を相次ぎ開発した。石田雅昭社長にモノづくりや人材育成の方針を聞いた。(大阪編集委員・林武志)
「ワクチン用は掛かりつけ医など主に小型・小口配送向けが狙いだ。(開発した小型保冷庫などは)環境試験器の部品ユニットを横スライドして使える利点もあった。低温でも対応実績ある温度域が豊富なため、適用が可能。新型コロナのワクチン接種が終わった後も、バイオ医薬品の輸送用でも活用できる」
―開発の時期と、そのきっかけは。「1月だ。春以降のワクチン接種スケジュールが具体化する中、当社には温度を制御する環境試験器の技術がある。すでに大型保冷庫は数多く、存在感を示しにくい。そうする中で接種施設もサテライト型などが打ち出された。小型・小口配送向けで当社の強みを生かせると判断した」
―肩掛け型保冷庫は沢藤電機との共同開発です。環境試験器は独自開発が中心でしたが、モノづくりの考え方は変わりましたか。「環境試験器は我々で手がける。ただ、振動や医療など環境試験器以外の規格では場合によって協業も必要になる。(ワクチン配送用保冷庫などを機に)医療分野向け製品も拡充していきたい。冷蔵庫の温度領域では参入者は多いがマイナス20度C以下など低温だと少ない。当社の環境試験器の温度設定ではマイナス85度Cまで対応可能だ。その温度領域で輸送対応の装置ができるプレーヤーは限られる」
―開発人材の育成方針を教えて下さい。「環境試験器を突き詰めるとともに、現在はこの技術を生かして食品や医療などへの応用を目指している段階だ。付加価値を加えるなら別角度の発想が求められる。技術を深掘りする人材は必要だが、異分野交流で幅広く門戸を開き、多様な人材育成に役立てたい」
ポイント/外部技術との融合がカギ
神戸R&Dセンター(神戸市北区)内に「全天候型試験ラボ」を3月に新設したエスペック。ラボ内では温度、湿度、雪、風、霧、光、雨を複合的に再現でき、自動車や車載機器、センサーといった幅広い部品・材料・素材メーカーの開発を後押しする。同センターは2020年5月に新技術開発棟が稼働。「共同研究スペースもある」(石田社長)という。今後は培ってきた環境試験器と、外部の技術との融合が飛躍への一助にもなりそうだ。