変革へ向かう製薬業界、アステラスは多様化するモダリティにどう対応する?

アステラス製薬安川社長インタビュー

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製薬業界は変革期に差し掛かっている。巨大な欧米市場や伸びが堅調な新興国市場を開拓できなければ、着実な事業成長は望めない。バイオ医薬品など新たなモダリティ(創薬手法)によるアンメットメディカルニーズ(未充足の医療ニーズ)の解決も求められる。いかに変化に対応し競争に勝ち抜くか、成長戦略や今後の見通しを各社の首脳に聞く。

技術基盤獲得で開発加速

―新型コロナの影響は。

「がん領域で数カ月程度開発に遅れが出たが、今後は大きな影響はないと見ている。臨床試験のリモート化が進むといった変化もあった。コロナをきっかけに臨床試験のリモート化が定着し、全体の効率が上がるだろう」

―日本の事業をどのように評価しますか。

「売上高が前年比減となったが、いくつかの医薬品の特許切れなどが重なったことが要因だ。ただこの状況は想定していたもので、問題視していない。落ち込んだ売上高はすぐに補えるものではないが、新薬の開発は順調に進んでいる」

―国際的な成長戦略は。

「中国や南米、中近東など新興国地域の市場の成長率に注目している。特に中国は方針や制度が変わったことで製品の販売計画が前倒しで進んだ。こうした変化を受け、第3相臨床試験から全世界の発売戦略を作り、販売の時間差を狭めていく」

―多様化する新たなモダリティへどのように対応しますか。

「科学的根拠に基づき、また市場規模などに着目した『フォーカス・エリア・アプローチ』という開発戦略を持っている。以前は低分子化合物が主流だったが、現在は遺伝子治療や細胞医療といった選択肢がある。こうした領域で自社にない技術や設備を一から作り上げると開発の律速となる。スピード感を持った開発には、他社との提携や買収で技術基盤を獲得していくことが重要と考えている」

【記者の目/幅広い知見強みに開発推進】

製薬企業の開発戦略は、疾患領域に的を絞るか、技術に基づいて対象疾患を定めるかの二つの傾向に大別される。アステラス製薬はこれらをバランス良く融合させ、さらに日々進歩する技術を柔軟に取り入れて迅速な開発につなげる戦略だ。培ってきた幅広い知見を強みに、領域や技術に縛られない開発を進める。(安川結野)

日刊工業新聞2021年3月23日

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