田辺三菱製薬のALS治療薬、売上高1000億円超の「ブロックバスター」に飛躍するか

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ALS治療薬「ラジカヴァ」

田辺三菱製薬が開発した主力の筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬「ラジカヴァ」(一般名・エダラボン)が、インドネシアで製造販売承認を取得した。同国におけるALS治療薬の承認は田辺三菱が初で、2021年1月に発売する予定だ。成長市場の東南アジア諸国(ASEAN)への進出を機に、世界市場の開拓に弾みを付ける。(大阪・中野恵美子)

ALSは運動神経が消失し、四肢や顔など全身の筋力低下と筋萎縮が進行する神経変性疾患だ。原因は現在も解明されておらず、発病率は年間10万人に2人とされる。

ラジカヴァは脳虚血に伴う脂質の過酸化反応「フリーラジカル」を消去し、脳への酸素供給を促して神経細胞を保護する。ALSの進行を遅らせる効果が確認されている。

ラジカヴァの20年3月期の売上高は230億円超。田辺三菱はラジカヴァの世界展開を進める中で、インドネシアがASEANで最初の承認国となった。上野裕明社長は「アジアは中国を中心にASEANにも拠点展開していく」と販売戦略を説明する。

インドネシアは世界4位の約2億6000万人の人口を抱えるが、数多くの島で国土が形成されているためALS患者数の実態は明らかになっていない。ラジカヴァの承認を契機に、ALSの治療に留まらず、他の神経難病の診療や研究の進展も期待されている。

ALSを巡っては、競合の仏サノフィが治療薬「リルゾール(一般名)」を東南アジアの複数国で展開する。田辺三菱はインドネシア以外にもシンガポール、タイ、マレーシアに申請しており、販売国を広げる。

ラジカヴァはもともと国内では脳梗塞治療薬「ラジカット」として販売してきた。その後ALSの発症に伴い上昇するフリーラジカルを消去し、筋力低下や筋萎縮の進行を遅らせる効果を見込んで適応申請を進めた。15年の日本での承認取得を皮切りに韓国や北米、スイス、中国の6カ国で製造販売承認を取得し、商圏を広げた。

現在、ラジカヴァは医療機関で投与する注射剤だが、欧米では患者が自宅で服用可能な経口剤を開発中だ。経口剤は投薬の際の患者負担が小さく、実用化されれば販売の伸展に寄与する。現在、欧米ともに第3相臨床試験を進めており、21年度に申請し、22年度の発売を目指す。

田辺三菱はラジカヴァの販売のピークは23年頃と見ており、売上高は700億―1000億円を目指す。製薬業界では1000億円を超える製品は大型薬「ブロックバスター」と呼ばれ、名実ともに各社の中核製品となる。田辺三菱が創薬したラジカヴァが向こう数年で大きく飛躍することが期待される。

日刊工業新聞2020年7月21日

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