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マイオリッジがiPS細胞を心筋細胞に分化する技術を提供、3年以内に5社へ

マイオリッジがiPS細胞を心筋細胞に分化する技術を提供、3年以内に5社へ

iPS細胞を心筋細胞に分化誘導する技術(分化した心筋細胞塊)

マイオリッジ(京都市左京区、牧田直大社長、075・746・7804)は、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を心筋細胞に分化する技術を提供する。治療に利用できる品質レベルの心筋細胞を大量かつ低コストに培養できる技術で、再生医療を手がける企業などに使用権を許諾する。他技術も含め、3年以内に5社へ使用権を提供したい考えだ。

提供する技術は低分子化合物を利用し、iPS細胞を心筋細胞へ分化誘導する。通常は大腸菌などを用いた組み替えたんぱく質を使うが、低分子化合物に置き換えた。低分子のためサイズが小さく、細胞の塊の内部まで入れるのが特徴だ。

隅々まで分化させられ、高純度の心筋細胞が作れる可能性が高いという。iPS細胞を他の細胞に分化させる場合、純度が低いとがん化するリスクが高い。リスクを抑えられる上、リスクを調査する労力も減らせる。

低分子化合物は組み換えたんぱく質より安価に入手でき、培地のコストを100分の1に下げられる。iPS細胞は液体の中に浮かせた状態で分化させ、単位面積当たりの生産効率も上げた。

iPS細胞を治療などに使う場合、一度に1億個以上の細胞が必要。低コストかつ大量に高品質な細胞を培養する技術のニーズは高い。iPS細胞由来の心筋細胞は、薬の安全性試験にも活用でき、製薬企業の関心も高い。マイオリッジの鈴木健夫執行役員は「まずは心筋細胞の技術提供で利益を上げる。多様な研究開発に活用し、再生医療、創薬技術の発展に貢献したい」と話す。

同社は2016年創立の京都大学発ベンチャー。心筋の分化誘導技術のほか、細胞培養装置の開発などを手がける。

日刊工業新聞2021年3月16日

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