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新型コロナでニーズ急増のクレベリン、「過去最高の売上高」大幸薬品の今後

柴田社長インタビュー
新型コロナでニーズ急増のクレベリン、「過去最高の売上高」大幸薬品の今後

大幸薬品公式サイトより

空間除菌の安全性広める

大幸薬品は新型コロナウイルス感染拡大で急増する衛生管理ニーズに対応し、二酸化塩素でウイルスや菌を空間除菌する衛生対策製品「クレベリン」を生産する新工場を約7カ月の短期間で稼働した。クレベリンの販売増は、2020年4―9月期連結売上高を前年同期比2・3倍で過去最高の109億円に押し上げた。さらなる成長に向けた方針を柴田高社長に聞いた。

―クレベリンの開発経緯は。

「医療現場の空間除菌を発想したのが始まりだ。これまで医療従事者が、手術中に患部から発生する有害な微粒子にさらされる課題があった。クレベリンは新型コロナ感染症に対する武器になりうる。新設した茨木工場(大阪府茨木市)を活用して在庫を適正化し、次のパンデミック(世界的大流行)にも備えたい」

―社内外での研究成果をマーケティングに生かしています。

「09年の新型インフルエンザを機に参入事業者が増え、日本二酸化塩素工業会を設立した。二酸化塩素を用いた空間除菌の安全性や有効性について、論文発表などを通じて科学的根拠を示してきた。またクレベリンを学校や医療機関に寄付したり、地域のふるさと納税に展開したりすることで認知度向上を図ってきた」

―海外の販売網をどのように拡充しますか。

「このほど、海外の新規開拓地域を統括する子会社『大幸薬品インターナショナル』を設立した。各国・地域との信頼関係を築き、行政から販売許可を得るなどの業務を拡充する。空間除菌市場の広がりに合わせ、当社の独自技術をライセンスアウトしたい。茨木工場を中核に、将来は世界各地で地産地消する体制の構築を目指す」

―再生医療分野にも乗り出しました。

iPS細胞(人工多能性幹細胞)由来の心筋細胞シートを開発する大阪大学発ベンチャーに出資した。再生医療などで使う細胞培養器は、目的とする細胞だけではなく菌も繁殖しやすくなるというリスクがある。細胞には影響を与えない低濃度の二酸化塩素を用いて、カビなどを除去することができるか検証する」

―組織体制や人材育成の方向性は。

「経営トップの目が届く規模として、従業員は現在の約250人体制を維持する方針だ。一方でグローバルに通用する人材育成に主眼を置きたい。副業や若手を中心とした学位の取得、共同研究先とのジョブローテーションなど多様な活動を通じ成長してほしい。医師や専門家との協議を通して現状の課題解決につながる価値を提供し続ける」

【記者の目/グローバル競争力に磨き】

クレベリンのラインアップだけでなく、海外販売チャンネルの拡充や寄付活動を通じて多様な衛生ニーズを取り込む大幸薬品。外科医の経歴を持つ柴田社長の「医療従事者を守りたい」との思いが原点。蓄積してきた科学的根拠が普及を後押ししている。新型コロナを追い風に人材育成を活性化し、グローバル競争力に磨きをかける。(大阪・中野恵美子)

日刊工業新聞2020年12月28日

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