全樹脂電池集電体を量産化へ、三洋化成とグンゼが覚書
【京都】三洋化成工業と関係会社APB(東京都千代田区)、グンゼは9日、新型リチウムイオン二次電池「全樹脂電池」の構造部材である樹脂集電体の量産と供給に関する覚書を交わしたと発表した。10月からAPBが量産する同電池向けに、グンゼが年間数ギガワット時分の樹脂集電体を守山工場(滋賀県守山市)で生産する体制を整備した。脱炭素化の流れを受けて拡大する市場を見据え、3社で最適な生産体制の構築を目指す。
グンゼの広地厚社長は樹脂集電体をプラスチックフィルム、エンジニアリングプラスチック、電子部品に次ぐ「(機能ソリューション事業の)4本目の柱に育てたい」と意気込みを語った。
全樹脂電池は異常時信頼性、エネルギー密度、コスト面で既存のリチウムイオン二次電池を上回る性能を持つとされ、大型定置用蓄電池などでの利用が想定される。樹脂集電体はその全樹脂電池のキーデバイス。3社が開発した樹脂集電体は、主にグンゼのカーボンをフィルム内に均等に分散させる技術と、異なる素材を最適に重ねる異種多層技術を応用した。安全性向上に寄与し、電池にクギなどで穴を開けてもショートしないという。
三洋化成は25年までに全樹脂電池事業の売上高で900億円を計画し、さらに「次のステージで約1000億円を投じ、年産30ギガワット時の次世代工場を建設する」(安藤孝夫社長)構想。これに合わせ広地グンゼ社長は「既存の当社工場や遊休地、APB次世代工場を候補に増産投資を検討したい」とした。
日刊工業新聞2020年3月10日