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堀場製作所がグループ総合力で進める「クロスセグメント活動」の正体

インタビュー/堀場製作所社長・足立正之氏
堀場製作所がグループ総合力で進める「クロスセグメント活動」の正体

足立正之氏

クロスセグメント加速

堀場製作所がグループ総合力を結集し、顧客にトータルソリューションを提案する“クロスセグメント”活動を加速している。自動車や半導体、科学、医用、環境の各事業を横断する新組織を中心に競合と差別化を図る戦略だ。「100年に一度の変革期」とされる自動車業界向け、「スーパーサイクル」に再度入ったとされる半導体業界向け事業をはじめ、成長施策を足立正之社長に聞いた。

―脱炭素社会を念頭に水素関連市場への取り組み強化を狙った横断組織「ハイドロゲンエナジープロジェクト」を立ち上げました。

「次世代により良い社会を引き継ぐには自動車や発電側からの視点による局部的議論でなく、全体最適の考え方が必要。当社は産業の計測を全て手がけ、エネルギーを作る所から使う所までカバーする。車はしばらくの間、選択肢が増える方向で多様化への対応と、どうバランスをとっていくかが未来のためになる。その中で水素がかなりの役割を占めることは確かだ」

―具体的な展開は。

「水素社会への取り組みは環境センシティブな欧州、特にドイツの勢いがすごい。現地子会社で燃料電池評価装置など手がけるが、今は水素を作るための計測機器の引き合いが多い。水素の製造手法は石炭から作る方法や都市ガスの改質、水の電気分解などさまざま。電気分解はクリーンだが、電気が必要で全体論もいる。エネルギーをどう作り、ためて、使うかの問いに計測制御で答えを出す」

―新組織の狙いは。

「縦割り事業に横串を通し、浸透させるのは簡単ではない。そこで人材をまとめ、以前の事業とのしがらみを切る形の独立組織とした。ここ数年、クロスセグメントを言い続けてきた。みんな必要性を認識して事業部門をまたいだ議論が増え、意識が高まっている」

―活況な半導体市場を背景に製造装置向け部品事業が好調です。

「ここ1年は好調が続きそうだ。現状はマスフローコントローラーと薬液濃度モニターが半導体事業の2本柱だが、他事業で展開していて半導体業界にも提案できる多数の測定機器をまとめ、3本目の柱にする。そのための部隊も作った。堀場に任せれば全部やってくれると認識されれば圧倒的な強みとなる」

記者の目/外部との協業も本格化

クロスセグメントは社内はもちろん、外部との協業も含めた取り組みだ。堀場が支援する米カリフォルニア大学の新研究所では発電所から電力網、交通までのコネクティビティー(相互接続性)を最適化する研究を行う。医用で独シーメンス子会社との協業も本格化する。同社はワクチンの出荷検査向け測定装置も手がけており、注目したい。(京都総局長・松中康雄)
日刊工業新聞2020年3月8日

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