抗がん剤の副作用で骨髄損傷の「緊急回復スイッチ機能」、阪大が発見
大阪大学大学院医学系研究科の数藤(すどう)孝雄助教と石井優教授らは、抗がん剤の副作用などで骨髄が損傷したときの緊急回復スイッチ機能を発見した。骨髄内の細胞が死ぬときに出す物質が、免疫細胞「2型自然リンパ球」を活性化し、血液の細胞の元となる造血前駆細胞に増殖を働きかけるように促す。骨髄損傷の回復機能の一端の解明により、抗がん剤治療や放射線治療の副作用、骨髄移植後の白血球減少症の治療などで活用が期待できる。
研究グループは、抗がん剤投与後、骨髄で血液の細胞の元となる造血前駆細胞が通常と違う働きをする点に注目。遺伝子発現から、細胞増殖を促すたんぱく質「GM―CSF」の刺激を受けていることを突き止めた。続いて骨髄内のさまざまな細胞のリボ核酸(RNA)を解析。2型自然リンパ球が通常は分泌しないGM―CSFを出して緊急回復スイッチの役割を果たすことを発見した。
2型自然リンパ球を体外で培養し、抗がん剤投与後のマウスに移植すると、造血前駆細胞の回復が早まった。骨髄損傷の治療法として応用が期待される。
日刊工業新聞2021年3月9日