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阪大が「シリコン製剤」でコロナ重症化の予防研究。早期の臨床目指す

大阪大学産業科学研究所の小林光教授は体内で水素原子を発生させるシリコン製剤について、新型コロナウイルス感染症への応用に取り組む。阪大大学院医学系研究科と連携して検証を進め、動物実験などにより同感染症の重症化で起こる間質性肺炎を防止できる可能性に行きついた。シリコン製剤は栄養補助食品として実用化済み。副作用リスクを抑えた安全性の高い重症化防止策として、早期の臨床試験を目指す。

水と反応しやすい特殊な表面加工をした粉末のシリコン製剤を開発。体内の水と反応し、表面に反応物のシリカと水素原子を発生する。シリコンもシリカも毒性がなく、体内では発生した水素のみ吸収され製剤は排出される。水素原子は他の原子と結合しやすく効果が得やすい。

新型コロナの重症化時は長時間の免疫反応に伴い、炎症に関わるたんぱく質インターロイキン6(IL―6)や活性酸素が発生するとみられている。水素原子は活性酸素と結合し抑制しやすく、それに伴い炎症の軽減も期待できる。

ラットでの動物実験ではシリコン製剤の投与で、特に毒性の強い活性酸素ヒドロキシルラジカルに伴う老廃物や体内のIL―6が減少。間質性肺炎で発生する細胞の線維化も軽減した。新型コロナ重症化防止が期待できるとし実用化を目指す。

日刊工業新聞2021年2月25日

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