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自動車解体後に残る「シュレッターダスト」、削減に向け事業者にインセンティブを政府が検討

政府は自動車解体後に残るシュレッダーダスト(ASR)の削減や再資源化を促すため、ガラスやプラスチックなどの素材を扱う解体業者や破砕業者などにインセンティブを支払う制度を導入する検討に入った。2021年下期にもまとめる自動車リサイクル制度に関する報告書の中に盛り込み、現行法の枠組みの中での制度設計を軸として数年以内に運用開始を目指す。

検討案は廃車から生じるプラスチックやガラスなどの破砕や選別を手がけ、素材産業などに再資源化して供給する事業者に対して経済的インセンティブを与える形で想定している。新車購入時にユーザーが負担するリサイクル料金を原資とし、事業者に付与して採算性確保や手間がかかる破砕や選別での精度向上を促す。

インセンティブ付与は再資源化につながる高度な処理に取り組む事業者を対象としたコンソーシアム(共同事業体)を設けて展開することを想定。廃車の処理や再資源化に関わる事業者が参画する仕組みを作り、不適切な処理が発生しづらい環境を整備する。

経済産業省と環境省が進めている有識者会議での意見や自動車メーカーなど関連団体の意向を踏まえ、導入への詳細な制度設計を進める。ユーザーに対するリサイクル料金への上乗せも含めて検討する。

国内での現状の自動車処理の流れでは、解体や破砕などで処理したASRは再資源化施設に持ち込んで熱エネルギーとして回収・利用する方法が広がっている。近年はプラスチックくずや雑品スクラップなどを海外に運んで処理することが難しくなり、国内で完結させる必要性も高まっている。

一方で国内の再資源化施設の処理能力も逼迫(ひっぱく)し、事故や災害による被害などで受け入れを停止する事態も頻発している。年間で約300万台の廃車が発生しており、制度導入で再資源化施設の負荷軽減や自動車関連での資源循環の流れを加速させる。

日刊工業新聞2020年3月3日

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