世界で加速の環境規制、トヨタ社長は「いろいろな電動化のメニューを持つ我々が選ばれる」

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豊田章男社長

燃料採掘から走行まで評価対象

大統領選でバイデン前副大統領が当選を確実にした米国では、環境政策の強化が見込まれている。自動車では企業平均燃費(CAFE)や、温室効果ガス(GHG)排出量を2026年モデルイヤーの車両まで21年モデルを基準に毎年1・5%ずつ厳しくする規制が既に決まっている。

新政権では新車開発のリードタイムなどを考慮し、26年モデル以降の車両から規制強化に動く可能性が指摘される。またバイデン氏は電気自動車(EV)の普及に向けた政策も掲げる。カリフォルニア州も35年までにガソリン車の新規販売を禁止する方針を示すなど、EVの拡販も予想される。

ただ足元ではスポーツ多目的車(SUV)などのライトトラック分野で「多くのメーカーが数年前から環境規制に届いていない状態」(IHSマークイットの波多野通プリンシパル)。トランプ政権で規制は緩和されたが厳しい状況が続く。今後の規制強化を見据えると、現実解として燃費性能に優れるハイブリッド車(HV)への注目も高まりそうだ。

日本では自動車メーカーごとに、新車の燃費を30年度までに16年度比約3割改善することを義務付ける新基準が導入された。特徴はEVも対象に加え、燃費評価に「ウェル・トゥ・ホイール(WtW、燃料採掘から車両走行まで)」という考えを取り入れた点だ。

WtWは車の走行時だけではなく、ガソリンや電気がつくられる工程も含めて燃費を評価する。EVは走行時の二酸化炭素(CO2)排出量はゼロだが、火力で発電した電気で走ればトータルでのCO2排出量はゼロではない。一方、経済産業省は30年代半ばに新車を全てHVやEVなどの電動車に切り替える目標を掲げる方針。現行の規制より「脱ガソリン車」の動きを明確化するとみられる。

またWtWの考えでは、EVはエネルギー(電源)の構成に左右され、中国やインドなど火力発電への依存度が高い国では、HVの方がCO2排出量が小さくなる。さらに自動車の生産から廃棄までライフサイクル全体でCO2排出量を評価する「ライフサイクルアセスメント(LCA)」も注目される。EVは電池の製造でもCO2を多く排出するとされ、LCAではHVの方が優位との見方もある。LCA規制についてPwCコンサルティングの轟木光ディレクターは「欧州では既に導入に向け議論やモニタリングが始まっている」という。

自動車の環境規制はライフサイクルのどの期間にCO2排出量を測定するかによって国ごとに異なり、電源構成にも左右される。PwCStrategy&の北川友彦パートナーは「究極的には車をつくってから廃車するまでの技術を磨くことが規制に左右されない指標になる」と指摘。車各社には各国の規制に応じて競争力の高いEVやHVなどをつくり分ける技術力や、ライフサイクル全体で環境負荷を下げる総合力が求められる。トヨタ自動車の豊田章男社長は「世界各地でエネルギー事情が異なり、いろいろな電動化のメニューを持っている我々が一番選ばれるのではないか」との認識を示す。

一方、輸出も含め日本で自動車の生産を維持するには、CO2排出量の少ないエネルギーや素材、部品、リサイクルといったサービスなどを提供する分厚い供給網(サプライチェーン)の構築も必要になる。CO2排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートルラル」の動きが世界で加速する中、車各社の競争力だけでなく、各国の環境対応力も問われることになる。

日刊工業新聞2020年12月9日

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