「北陸新幹線」年内に全面回復へ、JR東日本が緊急対策

 JR東日本は台風19号で被災した北陸新幹線について、繁忙期となる年末までに従来同等の輸送力回復を目指す。長野市内の車両センターが浸水し、全編成の3分の1に相当する10編成120両が使えない状態。運転を再開しても車両不足のために、運転本数は5―6割にとどまる見通しだ。上越新幹線に投入済み・投入予定の同型車両を転用し、車両検査でJR西日本の協力を仰ぐなど、緊急対策の検討に着手した。

 北陸新幹線は13日早朝に発生した千曲川堤防の決壊によって、線路の一部が冠水し、車両センターが全域で浸水した。今後、現地の本格調査を進める予定だが、信号関係の電源装置に甚大な被害が見つかっており、運転再開まで1―2週間かかる見通しだという。

 北陸新幹線ではJR東のE7系が19編成、JR西のW7系が11編成を運用中。このうち長野車両センターで浸水したのはE7系8編成とW7系2編成だ。詳細を調査した上での判断となるが「おそらく廃車となる可能性が高い」(JR東幹部)という。仮に修理ができても、現地での分解や車両の陸送などに相当の時間がかかるとみられる。

 北陸新幹線は電力会社が50ヘルツ、60ヘルツと異なる周波数で電力を供給する区間を走行するため、周波数切り替えに対応した車両しか走れない。急勾配区間があり、モーターやブレーキも専用仕様。現在、条件を満たすのはE7系とW7系だけだ。

 JR東は運用の効率化を狙い、新幹線系統ごとに車種の統一を進めており、3月からE7系を上越新幹線にも投入を始めた。20年度までに11編成を順次投入して、2階建てのE4系を置き換える予定にしていた。緊急対策として「E4系を延命させ、上越新幹線用のE7系を転用する方向で検討を進める」(JR東幹部)という。

 上越新幹線は2022年度末までに全列車をE7系に統一し、同時期に最高速度を引き上げて大宮―新潟間を最大7分程度短縮する計画だった。車両運用の変更は、この実現時期にも影響を及ぼしそうだ。

 E7系の新造を発注するとしても、早期に受領することは難しそうだ。JR東子会社の総合車両製作所(横浜市金沢区、J―TREC)は19年度に投入するE7系2編成を製作中だが、今後の要請に備えるべく、生産余力を捻出できないかの検討に取りかかった。だが横浜事業所はフィリピン都市交通向け車両で4―5年先まで生産計画が埋まっており、ラインの増設も難しい状況。他のメーカーも受注残を抱え、余力が見込めないもようだ。

 長野車両センターでは当分、車両検査を対応できないことから、JR西の白山総合車両所(石川県白山市)にも協力を仰ぐ。すでに両社が連携して対応することを確認した。

 JR東の業績にも少なからず影響を与えそうだ。災害時に備えて損害保険に入っているが、車両損傷の保険金はわずかという。E7系は1編成目が13年度に完成するなど、全体の使用年数は少ない。精査は必要だが、償却期間をかなり残していることから、廃車となれば多額の損失を計上する可能性が高い。

 20年3月に金沢延伸開業5周年を控え、北陸新幹線は試練に直面している。北陸と首都圏を結ぶ動脈として定着しつつあり、金沢をはじめ沿線に観光流動を創出した。早期の全面復旧を待ち望む地域の期待も強い。

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日刊工業新聞2019年10月17日

  

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