財産残す中小企業の「前向き廃業」増加の背景、青山財産ネットワークス社長の見立て

最善の選択肢分析を

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青山財産ネットワークスに中小企業経営者からの廃業相談が増えている。コロナ禍で金融機関から当面の資金を確保しても、事業構造に限界のある事業者は過剰債務で破綻しかねない。同社は債務が残る倒産ではなく、会社を整理し財産を残す廃業を支援する。蓮見正純社長は「廃業をタブーとしない時代になった」と“前向き廃業”を受容する社会の到来を指摘する。

―政府・日銀のコロナ禍対応の資金繰り支援で倒産件数は低く抑えられています。

「まず廃業と倒産は違う。会社を整理してプラスに財産が残るのが廃業で、債務が残ってしまうのが倒産だ。政府の資金繰り支援策はありがたく、黒字転換する見通しで借り入れる分にはいい。だが黒字見込みのない企業が借り入れを続けると、整理時に廃業でなく倒産になる。そうしたリスクが高まっている」

―企業が取るべき対応は。

「コロナ禍が完全に終わって以前の状態に戻ればいいが、そうなるとは言い切れない。今のうちに資産、負債を確認し、どんな選択肢があるかを検討するべきだ。事業の回復でキャッシュフローを生んでも、20年かけても返せない想定もあるだろう。冷静に最善の選択肢を分析し、中立な専門家に相談するのが大事だ」

―事業承継ファンドを手がけています。

「当社の事業承継ファンドは廃業支援ファンドだ。成長のためのファンドではない。新生銀行と一緒に、経営者一族の持つ株式、銀行借り入れなど必要なものを引き取って肩代わりする。そして所有不動産などを売却しながら銀行借り入れや我々に対する債務を返済してもらう。従業員の次の就職先を見つけ、退職金を支払う手伝いもする。その過程で会社の譲渡先が見つかることも多い」

―廃業は後ろ向きな印象があります。

「廃業はタブーだったが、コロナ禍で金融機関がどう廃業を支援するか関心を高めている。先日は金融機関の研究所が廃業支援の可能性を聞き取りにきた。以前は集客に苦労した当社廃業セミナーも想定以上の人気だ。銀行にしても、経営者が残した財産を基盤に生活を立て直し、従業員も再就職できれば、それが優れたサービスだと思う」

青山財産ネットワークス社長 蓮見正純氏

記者の目/財務を詳細に調べる時

政府・日銀の資金繰り支援策で外部資金の調達環境は緩和的だ。全国銀行協会によると国内銀行のコロナ禍対応の実質無利子・無担保融資額は1月末までで計9兆円。多くの事業者を救済したと同時に、過剰債務のリスクが指摘される。経営者、家族、従業員のためにも、財務をより詳細に調べる時だろう。(編集委員・六笠友和)

日刊工業新聞2021年3月1日

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