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みずほ銀・藤原頭取を直撃!コロナ禍の資金繰り支援は?デジタルシフトの中身は?

コロナ第3波となり、経済活動が再度停止することになれば企業の資金繰りは厳しさを増す。みずほ銀行の藤原弘治頭取に資金繰り支援を中心にDX、話題になった通帳の有料化などを聞いた。(聞き手・六笠友和)

コロナ禍の資金繰り支援

 -コロナ禍で資金繰り支援の状況はいかがですか。

「11兆円を実行した(取材時の11月上旬時点)。資金繰り対応の第1弾は一服感がある。大企業は2021年度通期、もしくは21年前半までの資金繰り対応を終えたようだ。コロナの第3波が来たら、年末から21年3月にかけて中小企業向けに(大きく資金需要が増加する)第2弾が生じる可能性もある」

 -企業はウイズ/アフターコロナに応じた事業に変える必要があります。

「第1弾時は資金繰り支援に官民をあげた。第2弾となれば事業の継続や転換、承継などのアドバイザリーと資金繰りをセットで提案するタイミングになる。この半年間は頭取として多くのお客さまと対話した。企業はデジタル化や海外進出など潜在的な課題が顕在化し、経営者は熟考を重ねて方向性を持っておられる。資金繰りとともに、そうしたご相談に応じていく」

 -資本性資金の支援状況はいかがですか。

「足元40件/1兆円のパイプライン(案件)があり、戦略的、選別的に対応していく。大きな構造改革をする場合に一時的に資本が毀損(きそん)することがあり、バックアップとして資本性資金の重要性が増している。資金繰りの安定性を求めてのご相談も増えている。大企業では直接金融も実行するため、資本性資金は格付けの維持、下支えとしても非常に重要な役割を果たす」

 -資本性資金については政府系金融機関の役割が大きいです。

「官民を挙げて産業の構造を変え、成長を促す観点でも使われる資金だ。政府系金融機関のトップの方々と意見交換し、検討している案件もある」

 -銀行団で支援する際のメーンバンクの役割をどう考えますか。

「メーンバンクが(劣後ローンなど)メザニンファイナンスの濃いところに資本性資金を供与することは、他の銀行のよりどころになる。銀行を取りまとめるメーンバンクはその意味で重要だ。ただ、リスクが高く、与信管理、リスク管理の徹底が大前提だ。金融システムに不安感を持たせない形で実行する」

「従来型の政策保有株式の削減を進めている。その分の資本余力を劣後ローンや優先株などに使い、お客さまと事業を一緒につくる『事業共創』を進める。この機に一緒に産業や事業再編を押し進め、お客さまの持続的な成長モデル、産業モデルの構築に役立ちたい。経営者の方々がコロナ禍の半年間で描いて温めてきた設計図を、実行に移すタイミングだ」

みずほ銀行の藤原弘治頭取

深刻化する事業承継問題

 -日本企業の事業承継問題が深刻です。どう関わりますか。

「日本の休廃業件数は19年に約4万3000件にのぼり、うち61%が黒字企業だという。高い技術力を持つ製造業、高品質のサービス業などたくさん良い会社があり、日本経済の財産だ。少子高齢という日本の構造問題に対し、お客さまを支援して銀行の役割を果たす。最優先の経営課題として力を尽くす」

 -非対面が求められる中、どう法人営業に取り組みますか。

「自粛期間中、リモートの頻度が増えた一方、対面することの価値が逆に上がった。会った時の濃さ、内容の深さが増した。リアルの営業とウェブ会議などのリモートを組み合わせ、顧客接点を最適化するのが重要なポイントだ」

 -新しい営業体制が必要になりそうです。

「法人部門は付加価値のある課題解決の能動的な提案をするために、お客さまの属性ごとにニーズの束を把握しなければいけない。中堅、中小、小規模企業のそれぞれでニーズの束は全く違う。中堅・中小企業営業部隊と中小企業部隊、小規模企業部隊の三つに分け、小規模の皆さまに向けては『エンゲージメントオフィス』というリモート部隊をつくる。資金調達の相談やアドバイスをリモートでしていく。中堅、中小企業を担当する部隊は、各エリアにある店舗1拠点に集める」

 -銀行店舗への来店客数は減少傾向です。

「リアルの店舗は事務処理の場から、コンサルティングの場へと変わる。個人、法人とも同じコンセプトだ。次世代店舗の中には従来約4割の広さだった相談スペースが8割になる例もある。カウンター後ろの事務処理スペースを店外の事務センターに集約していく。20年11月に移転開業の武蔵小杉店(川崎市中原区)を手始めに、24年度までに全店をそういう形に変える構想だ」

みずほ銀・武蔵小杉店など次世代店舗では店頭タブレットで取引を申し込む

デジタル化は大きく進む

 -デジタルシフトはどう考えますか。

「次期勘定系システム『MINORI』を稼働させたことで、デジタル化は大きく進む。デジタル通貨『Jコインペイ』、人工知能(AI)を使ったスコアリング『Jスコア』、RPAなど事務処理のロボティクスなどを取り組んできた。そして、いよいよ本丸の営業店がデジタル化する。店舗のタブレット端末などとMINORIのAPI接続により、紙の帳票は半分、窓口も半分、何よりお客さまの待ち時間、つまり事務処理時間が半分になる。この三つの半分で店舗を変えていく」

 -21年1月から紙の通帳発行を有料にします。

「通帳の有料化というよりは便利で使いやすいデジタル通帳の促進だ。各種サービスをこれから付加していく中でいつでもどこでもスマホでご自身の資産状況、残高状況を確認できる。紙の通帳に比べ、盗難、紛失のリスクを避けられ、さらに環境対応としても非常に良い。お客さまの利便性とリスク抑制、環境対応という三つを念頭に置きながらデジタルシフトを促す意味であえてやる。今までのお客さまと、70歳以上は無料継続だ。口座を新たに開かれる方に対して、デジタル通帳か紙の通帳かを選んでいただける選択肢も設けた」

日刊工業新聞2020年11月10日掲載の記事に大幅加筆

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