小型トラック「キャンター」をレスキュー車仕様に!三菱ふそうが改良進める
レスキュー車仕様に改良
三菱ふそうトラック・バスが災害時の情報収集に役立つトラックの開発を進めている。小型トラック「キャンター」をレスキュー車仕様に改良したコンセプトトラック「キャンター・アテナ」だ。国士舘大学などと共同研究を進めている。国内で多発する自然災害。その発生時に重要なのは初動の情報収集だ。的確な情報を素早く得られるような車両を目指し、産学官での連携も強めている。
国士舘大と開発
車両開発に向けた三菱ふそうと国士舘大防災・救急救助総合研究所との共同研究の始まりは2019年4月。三菱ふそうが「災害時に役立つ、災害に強い車両を製作したい。協力してほしい」と持ちかけた。
日本は11年の東日本大震災といった巨大地震、台風などの風水害といった自然災害に見舞われてきた。三菱ふそうは「トラック会社として非常事態時にどのような貢献ができるか検討していた」(アグスティン・トリスタンマーケティング・コミュニケーション部門課長)。そして災害時に役立つトラック開発に向けて19年9月、車両開発に向けた連携協定を同大と締結した。
「当初は万能型のレスキュー車の開発を目指した」と話すのは同大の津波古憲助教。災害現場の状況に合わせて積載物品や装備品を組み替えられる車両を企画した。しかし同年9月に千葉県南部を中心に襲った台風15号で開発方針が転換する。
ドローン搭載も
関東に上陸した中で過去最強クラスの台風は約93万軒の停電被害をもたらし、被害は長期化。被災地の状況把握にも時間を要した。「初動の状況把握の遅れは防災対策の遅れにつながり、被害はより一層深刻なものになると明らかになった」(津波古助教)。議論を重ねた結果、災害発生直後の情報収集を目的とした車両開発に焦点を絞った。
アテナの主な装備として水槽タンク、軽量バイク、発電機が搭載されている。中でも軽量バイクが“情報収集”という開発思想を体現する装備だ。被災地で進入不可能な道路幅の狭い場所でも軽量バイクなら入り込める。
今後は車両に飛行ロボット(ドローン)を搭載した研究などを進める。地上からは軽量バイクで、空からはドローンで被災状況を的確に把握できるようにする。災害時は取得した情報を東京都多摩市の対策本部にリアルタイムで送るシステムの構築を目指す。国士舘大防災・救急救助総合研究所がある多摩市は、20年2月に発足した車両開発に関する勉強会に加わる。
キャンターは宅配車やゴミ収集車などさまざまな用途で活躍している。トリスタン課長は「人々の暮らしを支えるキャンターを人命救助に役立つ車両として活用していく」と力を込める。
津波古助教は「アテナは災害時の現場で情報収集に使える車両としての運用を検討している。わが国の防災対策を俯瞰(ふかん)して画期的な研究だ」と胸を張る。引き続き産学官の連携により防災、減災に貢献する車両開発に取り組んでいく。(日下宗大)