「富岳」の技術を受け継ぐ富士通の商用スパコン、その10年の道のり

富士通「FX1000」、使いやすいマシン追求

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CPUメモリーユニットを持つ清水プラットフォーム開発本部プリンシパルエンジニア(左から2人目)ら

「FX1000」は、理化学研究所と共同で国家プロジェクトとして挑んだ世界最速スパコン「富岳」の技術を受け継ぐ商用機。国プロの成果を用いるスキームは前スパコン「京」の時と同じだが、当時は商用機の開発に別途1年を要した。今回はその経験を生かし、ほぼ同時進行で商用機を送り出すことに成功した。

富岳と同時進行の開発プロジェクトは2014年に始動したが、検討段階を含め足かけ10年の道のりだった。この間、富士通は600人以上の開発者を投入し、いくつもの課題を乗り越えてきた。

難題だったのは半導体製造技術の進歩だ。当初計画していたプロセス技術では目標の性能が出ないことが分かり、プロジェクトの途中で、線幅7ナノメートル(ナノは10億分の1)への切り替えを決断した。

当時、7ナノメートルのプロセス技術はまだ実用化されておらず、大きな賭けだった。スパコンの心臓部となる中央演算処理装置(CPU)の論理設計も、線幅に合わせて変更せねばならず、その分、開発は後ろ倒しとなった。

システム開発の主幹を務めた富士通の清水俊幸プラットフォーム開発本部プリンシパルエンジニアは「大規模プロジェクトの場合、ちょっとしたさじ加減でコストが大きくブレる。関係者に心配をかけてしまった」と振り返る。とはいえ、難題を解決し、18年にはCPUの試作版の完成にこぎ着けた。

FX1000は商用機ゆえに、客先の要望に応じた個別対応が必要となる。富士通は理研とともに富岳の完成を目指す一方で、個々の客先から求められる性能値を出すために奔走していた。

開発陣のこだわりは「使いやすいマシンの追求」(清水氏)。これに向けて、シミュレーションと人工知能(AI)との融合に力を注ぐなど、開発陣の挑戦は続く。富岳は世界最速の座を射止めたが、それは通過点の一つ。「身体を日々鍛えておけば、いろいろな種目でトップをとれる」(同)と胸を張る。(編集委員・斉藤実)

【製品プロフィル】

理研と共同開発したスパコン「富岳」の技術を用いた商用機。心臓部のCPU「A64FX」は電力当たり性能が極めて高く、さらに高性能積層メモリーの採用で高いメモリーバンド幅を持つ。用途は新薬や新素材の開発、試作レスのモノづくり、気象変動の予測、防災・減災などと広く、社会課題の解決への貢献が期待される。

日刊工業新聞2020年2月15日

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