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難局迎えた時計3社、試される「非時計」ビジネスの底力

難局迎えた時計3社、試される「非時計」ビジネスの底力

カシオのメタル素材のGショック

時計3社の2021年3月期は難しいかじ取りを迫られる。主力の時計事業はこれまで高価格帯や人気モデルに支えられてきたが、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大で販売が苦戦。同年3月期の連結業績予想は各社とも未定とした。

20年3月期連結決算はカシオ計算機シチズン時計セイコーホールディングス(HD)の3社とも減収・営業減益。シチズン時計は当期損益が7年ぶりに赤字となった。主に新型コロナの世界的な感染拡大で下期を中心に落ち込みが大きく、足元も販売減や新製品の投入時期変更などに見舞われている。

営業活動の停滞を受けてセイコーHDの滝沢観常務は「何らかの生産調整は検討する」とした。シチズンの佐藤敏彦社長も時計事業について「抜本的な見直しが必要」と指摘。アナログクオーツムーブメント(駆動装置)の生産縮小や電子商取引(EC)の拡大などで立て直しを図る。

一方で人気モデルの需要は底堅い。メタル素材を採用したカシオの耐衝撃ウオッチ「Gメタル」は20年1―3月期も前年同期比2%増収。セイコーHDも最高級ブランド「グランドセイコー」などグローバルブランドの伸長は継続した。“アフターコロナ”社会に適したブランド情報発信や販売戦略で回復を狙う。

時計以外の事業の底力も試される。セイコーHDは業務デジタル化の需要増が、好調なシステムソリューション事業にとってさらに追い風となる。シチズンは工作機械の市場環境も厳しいが、足元は中国が堅調で国内も想定より落ちていないとしている。カシオの田村誠治執行役員は「教育関数事業は感染拡大の影響を受けにくく、今後もしっかり伸ばせる」と期待を寄せる。

日刊工業新聞2020年5月25日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
時計大手の“非時計”事業は内容も戦略も三者三様。大黒柱である時計事業とのバランスをどのように取るのかも今後注目していきたいです。時計事業は経済活動の再開でどこまで回復できるのか気になるところ。個人消費の低迷をはじめ不安の種は多い印象です。

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