”排熱”が脱炭素につながる!東電子会社などが開発した蓄熱システムがスゴい!

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排熱を蓄熱してトラックで輸送

発電設備の運転で生じた排熱を回収して輸送し、別の場所で利用する蓄熱システムを東京電力エナジーパートナー(EP)などが開発した。100度C以下の低温排熱でも給湯や空調に活用でき、化石燃料の使用を削減できる。日本が輸入する化石燃料は発電などに使われているが、半分は排熱として失われている。未利用の排熱を使いこなせば大きな省エネ効果を生み、脱炭素にもつながる。

2020年2月まで日野自動車の羽村工場(東京都羽村市)で蓄熱システムの実証が行われた。工場内のコージェネレーション(熱電併給)システムの発電機の排熱をコンテナにつめ、トラックに載せて輸送。到着した羽村市スイミングセンターではコンテナから熱を出し、水を温めた。

発電機とスイミングセンターは2キロメートル離れており、普通に温風をコンテナに入れただけでは冷めてしまう。実証ではコンテナ内に搭載した蓄熱材に排熱をためて運んだ。

この蓄熱材は産業技術総合研究所が開発した「ハスクレイ」という無機材料がベース。通常は水分を吸着しており、排熱を吹き込むと水分がなくなって乾燥する。この時、排熱の熱がハスクレイに蓄熱される。空気を送風するとハスクレイは再び水分を吸着し、貯めていた排熱を放出する。

この蓄熱と放熱によって排熱を輸送可能にした。スイミングセンターは排熱の活用で燃料使用を減らし、二酸化炭素(CO2)の排出を抑える。東電EPはハスクレイを使った蓄熱システムを高砂熱学工業や石原産業、森松工業などと新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受けて開発した。

日野自動車のコージェネレーションシステム。発電機の排熱をコンテナ内のハスクレイに蓄熱

熱した物体が溶ける相変化を利用した潜熱蓄熱材が実用化されている。ハスクレイは蓄熱密度が高く、同じサイズのコンテナで潜熱蓄熱材の2倍以上の熱量を運べる。しかも100度C以下の冷めやすい低温排熱の蓄熱に向いている。

100度C以下の排熱を蓄熱するハスクレイ

乾いた空気を放熱するのもハスクレイの特徴。日野自動車は発電機の排熱を同じ工場内にある塗装工程の空調にも活用した。通常は除湿した熱風で塗装を乾かすが、ハスクレイの熱は乾いているので除湿運転を省ける。実証の結果、除湿・加温の空調エネルギーを半減できた。

日野自動車統括生技部生技開発グループの山内一正主査は「省エネ設備として非常に有効。多くの場所で使いたい」と語る。また実証では投資回収が8年以内という試算が出た。「蓄熱や放熱のために設置するダクトの設計次第」(高砂熱学研究開発本部の川上理亮主席研究員)と工場によるコスト差はあるが、大きな省エネ効果を得られる。

東電EPは蓄熱システムの営業を始めている。同社販売本部の佐藤雄課長代理は「引き合いがある。木質バイオマス発電の排熱を温浴施設に運んで利用することも想定できる」と語る。

蓄熱以外にもヒートポンプや発電による排熱の活用方法がある。エネルギー削減が進んだと言われるが、排熱に着目すると新たな省エネの余地が見つかりそうだ。

日刊工業新聞2021年2月26日

COMMENT

松木喬
編集局第二産業部
編集委員

ハスクレイを触らせてもらいました。息を吹き付けると発熱しました。もしかしたら「モバイル暖房」になると思いました。熱の輸送は、今後の話題になりそうな取り組みと思います。半分が排熱になっているということは、すべて有効利用すれば計算上は日本の発電は倍増(逆に言えば化石燃料の輸入は半分に)なります。SDGs関連ニュースがあれば、ニュースイッチの問い合わせまで。

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