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3万円突破の株価、エコノミストたちが読む上限と急落リスク

3万円突破の株価、エコノミストたちが読む上限と急落リスク

株価が終値で3万円を超えるのは90年8月以来(15日=東京都中央区)

1990年8月以来、30年6カ月ぶりに3万円を超えた日経平均株価。金融緩和や財政政策による資金余剰で過剰流動性相場が続いていることから運用マネーが株式市場を押し上げている。製造業を中心に日本企業の2020年4―12月期決算も好調で、景気回復への兆しが見えたことから出遅れていた日本株が上昇する相場展開が今後も続きそう。

好決算銘柄 弾み

「3万円の節目を突破したことは、日本経済の成長軌道入りを示唆する象徴的な出来事。3万円は一つの通過点だ」。大和証券グループ本社の中田誠司社長は15日、日経平均が3万円の大台に乗せたことを受け、こうコメントを発表した。

SMBC日興証券の近藤雄一郎社長も「株高のドライバーが金融緩和から財政政策・景気回復に移ったことが重要」と指摘。また、野村ホールディングス(HD)の奥田健太郎グループ最高経営責任者(CEO)は「日本の企業業績も21年度には大幅増益となる可能性がある。大規模な金融緩和策もあり、需給面でも外国人投資家の日本株買いが活発になる」と先行きを予想する。

世界のマネー 東京に

日本企業の好決算や米国の追加経済対策、新型コロナウイルス感染症収束への期待など株価を押し上げる要因はさまざまだが、根本には各国中央銀行の金融緩和や政府の財政政策による過剰流動性相場がある。市場にある通貨(流動性)が正常な経済活動に必要な水準を大きく上回る相場が20年3月以降続き、滞留しているカネが輸出主導型のマーケットで出遅れていた日本株に一気に流れ込んできた様相を見せている。

日経平均は大発会のあった1月4日に2万7258円38銭を付けてから、2月以降は製造業を中心とする企業業績の回復期待を背景に景気敏感株や好決算銘柄を中心に上昇を続け、連日バブル崩壊後の高値を更新していた。

12日には企業決算がほぼ出尽くしたことに加え、米債券市場で長期金利指標の10年債利回りが1・2%を超えたものの相場が崩れなかったこともプラスとなったとみられる。野村証券の池田雄之輔チーフ・エクイティ・ストラテジストは「景気に対する期待が表れての金利高だ。引き締めに対する警戒で金利が上がっているため、株高と両立しやすい」と指摘。「これまでは流動性相場の色彩が強かったが、金利高と株高の両立は(企業業績の向上で株価が上昇する)業績相場に移ろうとしていることの表れだと思う。流動性相場一辺倒から業績回復期待と両立するような局面になっている」と分析する。

コロナ禍―過剰流動性相場続く

世界的な過剰流動性相場の中、コロナ禍による巣ごもり需要でハイテク・グロース株の上昇が続き、日本株は出遅れた割安銘柄が多かった。三井住友DSアセットマネジメントの石山仁チーフストラテジストは「基本的に過剰流動性相場であることは何も変わっておらず、業績相場への移行というのはあまりにも早すぎる。業績が本格的に回復するのは年後半以降。失業率の改善など世界経済が本格的な回復軌道に乗るのはもっと先だろう」と先を見据える。今の株式市場は、過剰流動性の中で売られすぎていたものを買い戻す動きが顕著で、本当の意味での業績相場はもっと後になるとの見方もある。

連日高値を更新する日経平均だが、実体経済と株式市場の乖離(かいり)を指摘する声も多い。企業業績でも明暗が分かれているように、飲食・サービス業と製造業では景気回復に大きな差が開いている。石山チーフストラテジストは「株式市場は収益が上がるところを見極めて形成されており、実体経済とは何かを改めて見定める必要がある」と指摘する。

製造業堅調 通期上方修正421社

SMBC日興証券によると、12日までに開示した東証1部上場企業1444社(開示率98・4%)の20年4―12月期の営業利益は、前年同期比25・5%減、当期利益は同14・4%減。減益ではあるが、9月までの業績から回復傾向は強まっている。

コロナ禍の落ち込みから需要が回復する自動車や、半導体関連需要の拡大を受けた電気機器などが堅調だ。ソフトバンクグループは世界的な株高を背景に傘下投資ファンドの評価益が膨らんで当期利益が日本企業初の3兆円超えを達成した。

21年3月期見通しで営業利益を上方修正したのは421社で、下方修正したのは76社。中でも、製造業については上方修正が302社、下方修正が35社と上振れ傾向が強い。

トヨタ自動車は21年3月期の営業利益が20年11月公表時と比べ7000億円増の2兆円になると発表。ソニーも巣ごもり需要を捉えて上方修正、営業増益に転じて当期純利益は初めて1兆円を超える見通しだ。

自動車向け需要や石化市況の回復を受けて、三菱ケミカルHDや旭化成など総合化学の営業利益も上方修正が相次いでいる。自動車は裾野が広く需要回復は鉄鋼などにも及んでいる。

製造業を中心とした業績の回復が、予想より早いことが市場で好感されているようだ。

私はこう見る

ニッセイ基礎研究所 経済研究部・上席エコノミスト 上野剛志氏

3万円突破の背景として各国政府や中央銀行の金融政策効果が一番大きい。米連邦準備制度理事会(FRB)が実質ゼロ金利政策や量的緩和を維持したことで国債でリターンを得られず、株式に投資が向いた側面もあるだろう。また自動車や半導体など製造業を中心に20年4―12月期決算などが好調で、将来の景気回復を先取りした。今後は過熱感や3万円台を一度でも達成したことで調整局面に入ると見込んでいる。新型コロナのワクチン普及が順調に進み経済活動が正常化した場合、FRBが量的緩和を縮小することが考えられ、その際は大きく値崩れするリスクがある。今後も株価が上昇するシナリオでも3万2000円程度だと考える。(談)

日本総合研究所 調査部金融リサーチセンター副主任研究員 大嶋秀雄氏

コロナワクチン接種の開始やバイデン米政権の誕生で当面のリスクが後退した。トランプ前大統領の弾劾裁判の早期決着もコロナ禍対策の加速期待につながる。日本経済は20年10―12月期の企業業績が底堅く、20年5月ごろを底に回復が続いていると市場参加者は見ているのだろう。

ワクチン浸透による経済活動再開の期待は高く、日経平均はじりじりと上がりそうだ。ただし、期待が先行しており、企業倒産の増加などで期待が剥落すれば調整の恐れがある。それでも、20年3月の1万6000円台のような急落は想定しない。当時はコロナ影響が全く読めなかった。政府の支援策などで倒産は抑制され金融システムの安定も確認されている。(談)

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