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ダウは3万ドル突破、日経平均も29年ぶり高値。株価はどこまで上がるのか?

ダウは3万ドル突破、日経平均も29年ぶり高値。株価はどこまで上がるのか?

NYダウ3万ドル超えを好感して日経平均株価は続伸(11月25日)

米大統領選挙から1カ月が経過し、重しとなっていた国際政治の不透明要因の払拭(ふっしょく)や、新型コロナウイルス感染症のワクチン開発に対する期待を受け、国内外で株価が上昇している。

米株式市場はダウ工業株30種平均が4日、3万ドルを超え最高値を更新。日経平均株価も2万6000円台の高値圏が続く。世界的な金融緩和による低金利環境は今後も続く見通しで、コロナ禍からの経済回復への期待も高まっている。株価を押し上げる構図は今後も続くか。(高島里沙)

コロナワクチン実用化に期待

ダウ平均や日経平均株価の上昇は、主要国中央銀行による金融緩和の影響が大きい。新型コロナ感染症が再拡大する中、景気を下支えするため2021年も金融緩和姿勢は続くとみられる。株式など金融市場にとってはプラスになりそうだ。

実際3月以降、コロナ対応のための大幅な金融緩和によって、市場にある通貨(流動性)が正常な経済活動に必要な水準を大きく上回る「過剰流動性相場」の様相が強まった。一部の銘柄や債券に偏っていたカネが株に呼び戻される形で資金フローが変化し、足元の株高を支えている。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の斎藤勉シニアストラテジストは「コロナの感染拡大が金融政策を引き締められない状況を作り出している。過剰流動性相場の加速度がより増している環境にある」と指摘する。

日経平均株価は11月24日に2万6000円台に乗せて以来、高値圏で推移する。野村証券の小高貴久エクイティ・マーケット・ストラテジストは「株価上昇は行き過ぎではなく、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)をしっかり反映している」と断言する。

足元より先の業績を見込む指標のため「時間がたてばたつほど、バリュエーション(企業価値評価)は正当化されていく」と分析する。

日本経済は緊急事態宣言で外出制限や営業自粛の影響が大きかった4―6月を底に外需主導で持ち直しの動きがある。特に自動車生産は急回復し日米、中国を含むアジアで販売台数の見通しが上方修正されている。

野村証券では21年12月の日経平均株価を2万8000円と予測し、今後業績の回復が着実に進めば株価は次の上昇局面に入るとみる。大和証券は、21年度末までに3万円の大台突破を見通す。大和証券の阿部健児チーフストラテジストは「低金利環境の長期化を背景にバリュエーションが拡大し、株価を押し上げる」と見込む。

米株式市場では、4日にダウ平均、ナスダック総合指数、S&P500種株価指数の主要3指数がそろって過去最高値を更新した。経済正常化に対する期待の高まりが指数の上昇に表れている。

株価は高値圏で推移(東京証券取引所)

米ファイザーなど製薬企業による新型コロナワクチン実用化への期待が高まり株価を押し上げた。ワクチンで期待される効果は“経済の正常化”だ。経済が動き、人々の日常が戻ればコロナ禍で落ち込むサービス消費の回復につながる。製造業やエネルギー関連などのオールドエコノミー比率の高いダウ平均は、経済正常化の恩恵を最も受けやすい。

ナスダックとS&P500はハイテク株が大きく値上がりする格好で、12月に入ってからも大幅上昇が続いている。米マイクロソフトや米アマゾン・ドット・コム、米ネットフリックスなど市場で注目度の高い流行銘柄を中心にけん引する。

株価3万ドルの大台に(NY証券取引所)

今後の見通し

今後を見通す上でカギとなるのが、新型コロナワクチンと低金利環境だ。ワクチン実用化への期待が景気拡大への期待につながり、低金利が株価のバリュエーションの支えとなる。三井住友DSアセットマネジメントの石山仁チーフストラテジストは「景気が良くなるという気持ちと低金利が続くはずだという二つの良いとこ取りで今の株式市場は成り立っている」といい、「(本来であれば)景気が拡大しすぎると、物価が上昇して金利緩和基調は続けられなくなるはずだが、(コロナ禍で)そこにはふたをしている」と指摘する。

石山氏はダウ平均について「(3万ドル近辺なのは今だけで)3万ドルを値固めにして、21年1―3月には3万1000―3万2000ドルまでの上昇もありうる」と予測する。

バイデン新政権による景気対策の方針などが明らかになってくれば、もう一段階の株高が期待できそうだ。

景気拡大の期待追い風(東証アローズ)

私はこう見る

◆三井住友DSアセットマネジメントチーフストラテジスト・石山仁氏 日本経済に好影響

米株は日本株や日本経済に影響をもたらしている。日本でも景気回復の可能性は高まっており、低金利環境が続く。また欧米に次いで新型コロナワクチン普及についても期待できる。日本は米国よりも輸出依存型経済のため、業績回復の確実性が高まれば高まるほど、株価も上昇する。米株が上昇している要因のうちワクチン期待と景気回復に関しては、どれも日本株にプラスに働く。限界もあるが、株価は21年1―3月に2万7500円まで上がるとみている。すでに2万6000円台を回復しているため動きだすと速い。米株が反応するような良い材料が出て、日本株にとっても好感されればあっという間に上昇する。リスクオンのマーケットになっている。(談)

◆三菱UFJモルガン・スタンレー証券シニアストラテジスト・斎藤勉氏 経済再拡大に勢い

米株高は過剰流動性相場の加速度が増していることに加え、経済再拡大への勢いも同時に強まっていることが背景にある。循環的な経済の回復局面に向かっているため出遅れていた銘柄に対しても幅広くカネが回るようになった。日本株は米中株よりも少し出遅れていた部分を巻き戻し追い付いていくような展開が想定される。新型コロナの感染再拡大がもたらす影響を見るとレストランやホテルなどサービス業の持ち直しの動きが鈍いとしてもサプライチェーン(供給網)への影響は出にくくなっている。海運業や貨物運輸、半導体関連などBツーB(企業間)ビジネス自体は新型コロナが再拡大してもそれなりに円滑に進む。基本的に世界経済は回復の方向にある。(談)

日刊工業新聞2020年12月8日

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