感染拡大で「世界同時株安」、企業業績さらに下振れも
新型コロナウイルスによる肺炎感染の拡大が、世界の金融市場を動揺させている。春節(旧正月)の大型連休明け3日に再開した中国株式市場は急落し、上海総合指数は連休前の終値比で7・7%も下落。同日の日経平均株価も新型肺炎と1ドル=108円台半ばで推移した円高を嫌気し、終値は前営業日比233円24銭安。アジア各国の株式市場も軒並み下落した。中国および世界経済への短期的な影響は避けられず、どこまで長期化するかに焦点が移った。
新型肺炎感染の拡大が世界経済に深刻な影響を与え始めた。中国では自動車などの工場が春節休暇明け以降も稼働再開を延期し、サプライチェーン(供給網)に混乱をもたらしている。各国は製造業を中心に業績の下押し圧力になりつつある。
特に中国経済は深刻だ。新型肺炎が終息しなければ個人消費の回復は難しく、現地での生産活動も慎重にならざるを得ない。すでに中国は米中対立の影響で減速局面にあり、2019年の実質成長率は6・1%と29年ぶり低水準。新型肺炎の影響で1―3月の第1四半期の国内総生産(GDP)は2ポイント鈍化の4%台との試算もある。
ニッセイ基礎研究所の櫨(はじ)浩一専務理事エグゼクティブ・フェローは「中国の生産活動がどの程度の期間で正常化・復活するかが世界、中国経済への影響を大きく左右する。他国への感染が本格化すれば世界経済への打撃は避けられない」と指摘する。
日本経済への影響も懸念される。19年10月の消費増税や相次ぐ台風被災に伴い、すでに足元の景気は弱含みで推移。新型肺炎で中国経済が減速すれば日本企業の業績悪化は避けられない。すでに自動車業界では中国工場の稼働再開延期の動きが広がる。また日本での感染拡大となれば、東京五輪・パラリンピック中止という最悪シナリオも想定される。
ただ、重症急性呼吸器症候群(SARS)と同期間で終息すれば影響は限定的との見方もある。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの鈴木明彦研究主幹は「中国の1―3月期の実質成長率を下押しするだろうが、仮に0・5ポイント下落しても世界経済への影響は0・1ポイント程度にとどまる」と説明する。新型肺炎の終息時期に中国・世界経済は大きく左右される。