「バイデン相場」連日の株高、明暗分かれる非鉄と原油

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海外機関投資家は日本企業の好業績銘柄を評価。米大統領選以降、買いの動きをみせている(東京証券取引所)

米大統領選挙で民主党のジョー・バイデン氏が当選確実となったことで、株式市場が連日の株高となっている。10日の日経平均株価は一時、29年ぶりに2万5000円の大台を回復した。また、バイデン氏が掲げる環境・エネルギー政策を受けて、銅・アルミニウムなど非鉄相場には追い風となる一方、原油相場は上値が重い展開が続きそうだ。

株価/海外投資家、日本株買いの動き

米大統領選挙の情勢が明らかになるにつれ、日米で株価が上昇している。日経平均株価は10日、取引時間中に1991年11月以来、29年ぶりに2万5000円台を回復した。9日記録した29年ぶりの高値をさらに更新した。日本企業の好業績銘柄を評価する動きに加え、大統領選以降に海外機関投資家の日本株買いの動きが出てきた。野村証券の池田雄之輔チーフ・エクイティ・ストラテジストは「政策決定プロセスへの安心感は日本が米国より勝っている」と指摘する。海外機関投資家の買いが本格化すれば中長期的な上値余地は高まっている。野村証券は21年末に株価が2万8000円となることを予想する。

大統領権限の大きい通商政策については、新政権で米中関係の透明性が高まり、中国関連株に恩恵がありそうだ。バイデン氏も中国に対しては人道問題などで強硬姿勢を堅持するもよう。だが、通商政策については関税引き下げも選択肢に入れるとみられる。

貿易摩擦の緩和など、米中関係の見通しが改善することで、中国関連企業の中長期戦略は立てやすくなり、設備投資意欲も活発化しそうだ。「日本の輸出メーカーにとっては優位に働きチャンスになる」(池田チーフ・エクイティ・ストラテジスト)。

また、バイデン政権が成立しても米議会は上下両院で多数派が異なる「ねじれ」状態が継続する見通し。バイデン氏が掲げる法人税率引き上げなど左派的な政策が議会を通過できる可能性は低くなり「米国事業の大きい日本企業には朗報」(野村証券)としている。

株は一時、29年ぶりに2万5000円台に

原油/“脱石油”大きな転換点

バイデン氏の当選が確実になったことで、原油相場の上値は一段と重くなりそうだ。米国はトランプ政権下で4日、地球温暖化防止の国際的な枠組み「パリ協定」から脱退したが、バイデン氏は協定復帰を公約する。太陽光や風力発電を含む環境・インフラ投資に4年間で2兆ドルを投じる計画で、“脱石油”の動きが加速し需要減退が見込まれる。

また、バイデン氏はイラン核合意へ復帰の意向も示しており、イラン産原油の禁輸措置が解除される可能性がある。18年半ばまで世界供給の約4%を占めたイランの産油量は足元で半減しており、生産が回復すれば需給緩和が相場の重しとなる。

ニューヨーク市場の米国産標準油種(WTI)先物は、すでにバイデン氏当選による需給緩和を織り込みにかかっている。10月半ばまでは1バレル=40ドル台を維持したが、10月末以降は同30ドル台後半を中心に推移し水準を切り下げた。

足元では大統領選の混乱回避で株価とともに強含む動きがあるが、同40ドルを上抜けできずコロナ禍前の同60ドルが遠い。楽天証券の吉田哲コモディティアナリストは「期待先行の株価が調整に入るとパリ協定復帰が再び意識されて相場が下振れしやすくなる」とみる。

4―9月期決算では米大統領選の行方を問わず、「長期の原油価格シナリオを変更させる必要がある」(三井物産の安永竜夫社長)との声が聞かれるなど、世界的に脱石油は大きな流れになっている。ここに世界最大の石油消費国である米国でのエネルギーシフトが加わろうとしており原油市場は大きな転換点を迎えつつある。

為替/基調、緩やかな円安に

東京外国為替市場は10日午前に1ドル=105円台前半と、前日に比べ大幅な円安になった。米製薬大手ファイザーによる新型コロナウイルスのワクチン開発進展などで、円を売る動きが進んだ。ただ、10日午後は同105円手前の水準でもみ合い、米大統領選投開票後の円高・ドル安の基調に戻った。現時点でワクチン開発とドル円相場の連動性は薄いとみる向きがある。

一方、大統領選はバイデン氏の当選が確実となった。みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは「コロナ禍で財政政策を打ち続けるしかなく、ドルが過剰である状態が続く」と指摘する。向こう1―2カ月は現在の円高・ドル安を基本軸に考える。

唐鎌氏によると、近年のドル円相場は100―110円のレンジを外れるのはまれで、これを超える相場は考えにくい。コロナ禍のピークを21年1―3月とすると同4―6月以降に政策正常化の観測が出てきそう。米金利が上昇していくことでドルが買い戻され、「21年末にかけて円安の時期が多くなっていくだろう」(唐鎌氏)と分析する。

非鉄/EV需要で底上げ

バイデン政権の誕生は、非鉄金属相場にとって追い風となりそうだ。バイデン氏は、電気自動車(EV)充電施設の50万カ所設置や、EVへの買い替えを促す奨励金の支給などを掲げる。銅は電子部品に、アルミニウムは車体軽量化に、ニッケルは電池材料に使われるため自動車の電動化の広がりは「非鉄相場の上昇材料になる」(三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至主任研究員)。

自動車の世界販売シェアで約3割を占める中国は10月に、35年をめどに自動車販売の全てをEVなど環境対応車にする計画を公表。ここに約2割を占める米国のEVシフトが加わり、非鉄需要は底上げされることになる。

足元ではロンドン金属取引所(LME)の非鉄金属相場が堅調。米国の政局混乱懸念の後退で市場がリスク選好に傾き主力の銅は1トン=7000ドル近辺と約2年5カ月ぶりの高値圏を推移。EV需要の期待も相場を支える。

ただ世界景気がコロナ禍前に戻っていない状況で、期待先行の上昇には警戒感も強い。住友金属鉱山の安川修一常務執行役員は「需給バランスはそこまで上向いていない」とし、同社は20年度下期の銅相場想定を同6300ドルに設定した。

また中国通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)に対する米国の規制で、第5世代通信(5G)のインフラ整備に支障が生じているがバイデン政権でも対中強硬姿勢は継続する見通し。中長期では銅の電子部品需要に強気の見方が少なくないが期待先行の相場の調整リスクや米中摩擦による需要減速には警戒を要しそうだ。

日刊工業新聞2020年11月11日

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